2016年2月25日、大阪梅田で自動車が暴走して死傷者を出した事故は、「テロかと思った」という証言もあるほど異様な光景だったそうです。しかし、運転手はテロリストなどではなく、非常に温厚な人物でした。報道によれば、運転手は奈良県内の県立高校で教員を務めたのち、県内のビル管理会社を経営していました。突然の暴走は、運転手の体調に起因するとの見方が有力です。
運転中に発症して大事故を引き起こす事故といえば、てんかん発作を思う浮かべる人も多いことでしょう。てんかんの持病があるにもかかわらず、薬を飲んでいなかったために発作が起き、大きな事故につながった例もありました。
(参考:歩道暴走で死亡事故! 「てんかん」と「高齢」、運転の危険性を高めるのはどっち?)
しかし、今回の梅田暴走事故を引き起こしたのはてんかんではなく、「大動脈解離」という血管の病気でした。
笑瓶が語る大動脈解離の症状
タレントの笑福亭笑瓶さんは昨年末にゴルフのプレー中に体調が急変。救急搬送のためにドクターヘリを手配する騒動がありました。この選択は大正解で、実はこのときの病気というのが、突然死の可能性もある「大動脈解離」だったのです。
(参考:笑福亭笑瓶さんが救急搬送! 全国に46機しかない「ドクターヘリ」大活躍!?)
笑瓶さんは「ダウンタウンDX」(2月25日、日本テレビ系)に出演し、このときの症状についてこう語っています。
「心臓が内側から裂ける。激痛でした」
笑瓶さんの場合は胸の痛みでした。恐らくドクターヘリの手配を判断した人は、とっさに心筋梗塞を連想したのではないでしょうか。大動脈解離は血管の病気ですが、心疾患の症状と共通点があることが分かります。また、人によっては胸ではなく背中側に激痛が走ることもあります。
ゴルフ中の発症であれば、ただちにプレーを中止して病院に連絡することもできますが、これが運転中だったとすればどうなっていたでしょうか。激痛によって運転を継続できず、大きな事故につながってしまうことは容易に想像できます。
意識障害をともない、脳の病気を疑われるケースも
大動脈解離は意識障害を伴うことがあります。意識を失って救急車で運ばれた患者が、最初は脳梗塞を疑われて頭部をCTで調べてみても異常はなく、よくよく検査してみると大動脈解離であることが判明する、といったこともあるそうです。
大動脈解離の発症件数は脳梗塞に比べて少ないため、医師といえども最初に大動脈解離を疑うことはなかなか難しいようです。
このように大動脈解離は心筋梗塞や脳梗塞といった、同じく緊急対応を要する疾患とよく似た症状を伴います。そのため、大動脈解離だったことが分かるのは発症から時間が経ってからのことが多いのです。ただし、私たちができることは心筋梗塞、脳梗塞、大動脈解離のいずれの場合も変わりません。つまり、すぐに救急車(またはドクターヘリ)を呼ぶことです。
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