高齢者が寝たきりになる一番の原因は「廃用性筋萎縮」だそうです。廃用性筋萎縮というのは、使われていない筋肉が弱くなってしまうことで、筋力が一定水準以下になると立ち上がることができなくなります。高齢者が転倒によって骨折したのがきっかけで寝たきりになることがありますが、これも骨折の治療で安静にしている間に筋肉が落ちて寝たきりになるという意味では、廃用性筋萎縮の一例ということができます。
1週間寝ていると10~15%の筋力が失われる
ベッドに寝たままで安静にしていると、1週間程度でも10~15%の筋力を失ってしまうそうです。高齢者の場合、2週間安静にしていると下肢の筋肉が約2割萎縮するといいます。筋肉を何割失ったら寝たきりになるのかは個人差が大きいのですが、高齢者の多くは筋肉量に余裕のある人が少なく、自力で立てるか立てないかのボーダーラインが意外なほど近くまで迫っていることが多いといいます。筋力が低下すると、関節が固くなって動きが悪くなる「関節拘縮」も生じます。病気やケガは治ったけれど、立とうとしたら立てなくなっていた、というケースが多いそうです。
筋肉は予想以上に早く失われてしまいます。反面、失われた筋肉を回復するのには長い時間をかけて懸命にリハビリを続けなければなりません。1日安静にしていて失われた筋肉を回復するには約1週間、1週間の安静なら約1か月の回復期間が必要だといわれています。ある程度の筋力があれば強い負荷で効率的に鍛えられますが、極端に筋力が落ちてしまった場合は効率的なトレーニングも難しく、根気よく時間をかけて回復を図るしかありません。
ベッドの上でもできるだけ動く
普段あまり意識的に運動をしていない人でも、日常生活の中で一定水準の筋活動を発揮しています。椅子から立ち上がる、階段を上る、草取りをする、家事をする、など、何でもないことのように思える動作にも体力を維持する効果があります。健康なときには、日常生活を送ることで筋肉を維持できているのです。
ところが病気になってベッドの上での生活が中心になると、日常生活から得られていた筋肉への刺激が無くなってしまいます。最低限の筋力を維持するのに特別に大きな負荷は必要ありませんが、全く負荷がなくなってしまうことは避けなければなりません。ベッドの上で過ごさなくてはならないときは、できるだけ長い時間を座って過ごすようにします。そして、上半身など、動かせる部位をできるだけ動かす体操を取り入れます。これだけでも、ただ安静にしているよりも筋力の低下を抑えることができます。
寝たきりを防ぐには、骨折などの入院が必要になるケガを防ぐこと、そして、入院が必要になってしまったら完全な安静は極力避けることが大切です。
高齢者が寝たきりになりやすい、「大腿骨頸部骨折」と「大腿骨転子部骨折」