レスリング女子の吉田沙保里選手が喘息と診断されていたことが分かりました。吉田選手は9月の世界選手権前から咳が止まらず、走ったり、運動をしたときに息が上がり、寝られないこともあったといいます。しかし、薬の吸引によって現在症状は軽減しており、練習は続けているそうです。「息が上がる」というのは喘息の症状か、あるいは、気管支を拡張して症状を和らげる喘息の治療薬の影響が考えられます。また、運動が原因で喘息の発作が起きることもあります。意外に知られていないことですが、実は、喘息はオリンピック選手の間で最も多く見られる病気なのだそうです。
オリンピック選手に最も多く見られる病気は「喘息」
西オーストラリア大学のKenneth D. Fitch博士らの研究チームは、2002年から2010年の5回の夏季・冬季オリンピック選手のデータを分析しました*。それによると、喘息の治療に用いられるβ-2アゴニスト(IBA)という薬を服用している選手が全体の8%に及んだそうです。この薬には、息切れ、手の震え、脱力感、頭痛、動悸といった副作用が伴います。また、冷たい空気を吸うせいか、夏季よりも冬季の種目の選手の方が喘息をかかえている割合が高かったといいます。
*An overview of asthma and airway hyper-responsiveness in Olympic athletes(http://bjsm.bmj.com/content/46/6/413.abstract)
喘息に対する運動の影響は?
適度な運動は喘息を改善する効果がありますが、激しい運動は喘息の症状を引き起こします。運動をしたときに喘息の症状が現れることを「運動誘発喘息」といい、軽症の患者で約35%、中等症患者で約78%に見られるといいます。
激しい運動ほど運動誘発喘息が引き起こされやすくなります。また、喉が乾燥しやすい環境ほど症状が出やすくなります。反対に喉が乾燥しない水泳などではあまり見られません。運動の合間に休憩時間を入れるインターバルトレーニングでも起きにくいそうです。
アスリートが喘息の発作を避けるには?
喘息の発作をさけるには、
・冷たい空気を吸わないようにする
・喉の乾燥を防ぐ(マスクの着用も有効)
・ウォーミングアップをしっかり行う
・運動前に薬を吸入する
・休み休み運動する
といった対応が考えられます。
運動誘発喘息のことを考えると、本当は激しい運動は避けた方が良いのかもしれません。しかし、競技者の場合にはそうもいっていられないでしょう。喘息の発作が起きないように配慮しつつ、かといって運動の強度を落とすわけにもいかない……本当に、難しい選択ですよね。医師、コーチ、選手が知恵を出し合い、この難局を乗り越えてくれるのを期待しましょう。
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