とくにスポーツを行っている人の中には胸や脇腹のあたりの痛みが慢性化している人が少なくありません。骨が折れているような場合は原因もはっきりしますが、中には、強く打ちつけたわけでもないのに痛い、ということがあります。スポーツでは上半身を捻る動きが沢山出てくるので、繰り返し動作を行ううちに炎症が起きてしまっているのかもしれません。ここでは、胸や脇腹の痛みについて整理してみましょう。
胸を取り囲む色々な骨
心臓や肺といった重要な臓器は「胸郭」によって守られています。胸郭には外部の衝撃から臓器を守るための強度と、呼吸や運動の際に必要な柔軟性が備わっています。
胸郭の構造を見てみましょう。背中側にある胸椎(背骨の一部)と体の前面にある胸骨とが縦の柱となり、この2の柱を左右の肋骨が外側に張り出しながらつなぎ合わせることで鳥かご状の骨の入れ物ができあがります。肋骨と胸骨の間は「肋軟骨」という軟骨になっており、クッションの役割りを果たしています。肋骨を打ちつけてもすぐに骨が折れないのは、助軟骨が衝撃を吸収しているからです。
胸部の痛みの原因は?
胸や脇腹が痛むときは、胸郭を形成している骨や軟骨、筋肉が損傷している可能性があります。
まず、肋骨が折れてしまっているときは当然痛みがでます。体をひねる、せきやくしゃみをする、といったときに鋭い痛みが生じます。
骨が折れていない場合でも、骨折と良く似た症状が出ることがあります。胸の痛みの約3割を占めるといわれるほど頻繁に見られるのが「肋軟骨炎」です。肋骨と胸骨をつなぐ軟骨部分に炎症が起きている状態です。
また、骨ではなく、肋骨と肋骨の間にある肋間筋という筋肉が、打撲や体の捻りによって傷ついている場合にも同様の痛みが生じます。
高齢者に多いのが肋間神経痛です。長時間不自然な姿勢をとっていたり、急に重いものを持ったときに生じやすく、肋骨に沿って痛みがはしるのが特徴です。
胸の痛みの原因は多彩です。ここで紹介した整形外科系の疾患以外にも、狭心症や肺がんといった重大な疾患が隠れていることがあります。胸に身に覚えのない痛みが生じたら、医療機関を受診することをお勧めします。