ロックバンド「X JAPAN」のギター・PATAさんが大腸憩室炎と門脈血栓症のため入院したことが分かりました。これにより、3月11日に予定されていた新アルバムの発売と、翌日のロンドン公演が延期となりました。
報道によれば、PATAさんは深刻な状況は脱したものの、「手術を余儀なくされる」とのこと。病状が重いのではないかと気になりますよね。ここでは、大腸憩室炎と門脈血栓症で手術が必要になるケースを見てみましょう。
大腸憩室炎で手術が必要になるケース
まず、「憩室(けいしつ)」というのはあまり耳にしない言葉だと思います。これは、腸の粘膜が消化管の外側に飛び出し、袋状になっている部位のことを指します。大腸に憩室がたくさんできることを大腸憩室症と呼びます。
大腸憩室症は症状がなければ治療の対象とはなりませんが、憩室に出血や炎症が生じた場合は治療を行います。大腸は、細菌を含んだ便の通り道です。便がつまるなどして憩室に炎症が起きると、腹痛、発熱、白血球の増加などが見られます。なお、検査機器が現在ほど進歩していなかった時代には、大腸憩室炎を虫垂炎と誤って診断し、虫垂炎の手術を行ってしまうケースもあったそうです。
大腸憩室炎の治療の目的は炎症を抑えることです。基本的には抗生剤による薬物療法を行います。特に注意が必要な事態は、憩室に穴が開き、大腸の中の細菌によって腹膜炎が引き起こされることです。こうなると、生命にも関わる敗血症のリスクも高くなります。大腸憩室炎で手術が必要になるのは、憩室の周りに膿がたまって手術でなければ取り除けない場合、または、腹膜炎が起きている場合だといえます。
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門脈血栓症で手術が必要になるケース
次に、門脈血栓症で手術が必要になるケースですが、こちらは予防的な手術である可能性があります。門脈血栓症は、肝臓につながる門脈という重要な血管が詰まってしまう病気です。門脈がつまると、門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)が引き起こされ、肝臓から心臓に戻る血液の流れが悪くなります。
門脈圧亢進症になると、心臓に戻ろうとする血液が本来の経路とは異なるさまざまな迂回路を通るようになります。迂回路となる静脈は、もともと大量の血液が通るようにはできていないため、静脈の血管の壁に異常が現れます。これが、食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)または胃静脈瘤(いじょうみゃくりゅう)で、しばしば吐血の原因になります。
このように門脈血栓症が原因となって、静脈瘤破裂による出血が起きる可能性があることがあらかじめ予想されます。これを防ぐため、破裂する前の静脈瘤の予防的な手術を行うことがあります。
報道からは、PATAさんが手術を余儀なくされている理由が、大腸憩室炎によるものなのか、門脈血栓症によるものなのかまでは分かりませんが、後者の場合は予防的な手術である可能性もあり、必ずしも「手術を行うくらいだから深刻な事態のはずだ」と考えなくてもよいようです。いずれにおいても、PATAさんの回復と復帰を願いたいですね。