3月21日、進行胃がんで亡くなられた四代目江戸家猫八さんは66歳。がんで亡くなるにはまだまだ若い年齢ですよね。「若いとがんの進行が早い」ということは一概にはいえないそうですが、胃がんに関しては別。胃がんは若くして罹る場合の方がたちの悪いがんになりやすく、実際に進行も早いそうです。
高分化型腺がんと低分化型腺がん
胃がんといってもタイプはさまざま。胃がんの分類には、高分化型腺がんか低分化型腺がんかに分ける方法があります。老化にともない、慢性胃炎を背景に発生する高分化型腺がんは比較的おとなしいタイプのがん。高齢者の胃がんの多くは高分化型腺がんで、早期に発見し内視鏡治療を行うことができれば予後が良いのが特徴です。
一方、低分化型腺がんは老化や慢性胃炎を背景としないタイプのがんで、正常組織との性質の違いが大きく、また、肉眼で見たときにがんと正常組織の境界がはっきりしないのが特徴で、非常にたちがわるく、若い人の胃がんに多いといわれています。
低分化型腺がんにピロリ菌は関係ない
胃がんの原因としてピロリ菌の存在が広く知られるようになりました。ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に萎縮性胃炎、腸上皮化生(腸の粘膜のような性質に変化すること)が生じ、胃がんを発症しやすい環境になります。しかし、このような経過で発生する胃がんは先の分類でいうと高分化型腺がん、つまり、高齢者に多い比較的おとなしいタイプの胃がんなのです。
一方、低分化型腺がんはピロリ菌の感染とは別の経路で発生すると考えられます。慢性胃炎を経て、ゆっくりとがんが進行する高齢者の胃がんとは異なり、進行が早いのでやっかいです。進行の早い胃がんには「スキルス胃がん」(スキルスは「硬い」を意味する)が知られていますが、現在、病理組織診断名としては「スキルス胃がん」といういい方はしないそうです。いわゆるスキルス胃がんは粘膜下の胃壁をびまん性に浸潤するという特徴を持っており、こうした浸潤の仕方は低分化型腺がんに見られるものです。スキルス胃がんと低分化型腺がんは同じものではありませんが、この2つはある程度重なっています。
江戸家猫八さんが66歳という若さだったことを考えると、高齢者に多い高分化型腺がんではなく、たちが悪く、進行の早い低分化型腺がんの可能性も考えられますね。
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