俳優の阿藤快さんが亡くなられました。当初、「心不全」と報道されていましたが、続報により、死因は「大動脈破裂」であることが分かりました。
急性大動脈疾患の発生数は急性心筋梗塞の約3分の1
生死にかかわる心臓や血管の病気として最初に思い浮かぶのは心筋梗塞ではないでしょうか。心筋梗塞は、動脈硬化の影響で心臓の血管が詰まってしまう病気です。件数としては心筋梗塞ほどではないのですが、同じく生死に関わる血管の病気が大動脈瘤や大動脈解離といった大動脈疾患です。大動脈瘤は、大動脈の一部が瘤状に膨らみ、血管が破れやすい状態になってしまう病気です。大動脈解離は、大動脈の血管の内側が剥がれて、異常な血液の流れが生じたり、血液がにじみ出たりする病気です。
東京都CCU連絡協議会によれば、東京都における年間の急性大動脈疾患の入院患者は1650例(2013年)で、その内訳は急性大動脈解離が1260例、大動脈瘤が390例となっています。こうした急性大動脈疾患の発生数は急性心筋梗塞の約3分の1に相当するそうです。急性大動脈疾患の約半数は24時間以内の手術を必要とし、30日間の死亡率は急性大動脈解離が15%、大動脈瘤が31.3%となっており、特に大動脈瘤の死亡率が高いことが分かります。
予防ができる大動脈瘤
破裂してしまった場合に死亡率が高くなる大動脈瘤ですが、あらかじめ発見していれば破裂を防ぐことが可能です。大動脈瘤の危険因子には動脈硬化、高血圧、高齢、喫煙、糖尿病などがあります。大動脈瘤が見つかった人は、半年から1年に1回はCTで大動脈瘤の状態をチェックしながら、こうした危険因子のコントロールに努めます。特に高血圧は大動脈瘤が大きくなったり、破裂したりといったリスクを高めるので、強いストレスや、寒い環境、便秘といった高血圧につながる要因を避け、降圧剤で血圧の上昇を防ぐようにします。
大動脈瘤の破裂の危険性が高い場合には、予防的な手術を選択します。外科手術による方法とカテーテル治療による方法がありますが、いずれも大動脈瘤の破裂を防ぐ効果があります。外科手術では、開腹または開胸し、大動脈の一部を人工血管に置き換える「人工血管置換術」を行います。カテーテル治療では、瘤のできた大動脈の内側にステントグラフトという金属の筒を入れて瘤への血流を遮断する「ステントグラフト内挿術」を行います。一般的には、外科手術は体への負担が大きいため、ステントグラフト内挿術が増加傾向にありますが、治療法にはそれぞれメリットとデメリットがあるので医師とよく相談して治療方針を決めることが大切です。
大動脈瘤は破裂する直前まで症状がないことが多いといいます。早期発見のためには検診が不可欠です。腹部の大動脈瘤はエコー検査によって、胸部の大動脈瘤は胸部X線検査によって発見されることがありますが、正確な診断にはCTまたはMRI撮影が必要だとされています。多くの場合、症状など、何かのきっかけがなければCTやMRI撮影を行うことは稀でしょう。しかし、動脈硬化が進んでいる、家族に大動脈瘤に罹った人がいる、高血圧である、というようにリスクが高いと思われる人は検査について検討しておくとよいのではないでしょうか。
大動脈の血管の壁が剥がれる「大動脈解離」とは?
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