お笑いコンビ・品川庄司の品川祐さんは11月23日、「私の何がイケないの?」(TBSテレビ)に出演し、「グリオーマ」で命を落とした姉について語りました。品川さんの姉はグリオーマのため余命4か月と診断されましたが、2年近く生き続けた後、42歳の若さで亡くなったといいます。品川さんは、「短いですけど、良い一生だったと思います」と号泣しました。
グリオーマは代表的な脳腫瘍で、脳の中にあるグリアという細胞が腫瘍化したものです。グリオーマにも良性と悪性がありますが、脳という重要な部位にできるため、たとえ良性であっても障害を引き起こしたり、死に至らしめたりする危険があります。グリオーマが厄介なのは、放射線治療や抗がん剤治療が効きにくい点です。治療の第一選択は外科手術となりますが、非常に高いハードルを超えなければなりません。障害を起こすことなく、外科手術でグリオーマを摘出することは可能なのでしょうか。
手術はナビゲーションを使って行われる
東京女子医科大学はこの分野において先進的な治療を行っていることで知られています。同大学にはインテリジェント手術室と呼ばれる手術室があり、ここには脳腫瘍の手術に用いられるさまざまな検査機器が揃えられています。
脳に障害を残さずに手術を行う方法というのは、ひとことでいうと、手術中に同時にいくつもの検査を行い、その結果を随時手術にフィードバックしながら手術を進めるというものです。現在の脳神経外科手術は術者の主観的な判断によってではなく、ちょうど自動車のナビゲーションと同じように、どのような手順で進めるべきかをコンピュータがガイドをしてくれるナビゲーションシステムを用いています。このナビゲーションシステムに術中にどんどん新たな情報を加えていき、手術の精度を高めるというのが最先端の方法です。
手術中に重要になる情報とは?
脳腫瘍の摘出にあたっては、次の3つの情報が重要になります。
1)腫瘍の位置に関する情報
MRI撮影というと、通常は治療の前の検査で行うものですが、脳神経外科の手術では「術中MRI」といって、手術中にも撮影を行います。これによって、現時点において、腫瘍がどこに位置しているのかを正確に把握することができます。
2)脳の機能に関する情報
脳にはいたるところに重要な機能を担う場所があります。腫瘍を摘出するにあたっては、そうした重要な場所にダメージを与えないように注意する必要があります。手術は、どこが重要な機能を担う場所なのかを把握しながら進められます。
3)摘出したものが腫瘍かどうかの情報
腫瘍を完全に取り切らずに残していると後から大きくなることがあるので腫瘍はしっかり取る必要があります。しかし、正常な組織まで多めに取ってしまうのは避けなければなりません。そのため、現在切除しているのが腫瘍なのかどうかを迅速に診断しながら手術を進めます。
「運動誘発電位」という方法は、手術中に運動神経が傷つけられていないかどうかをモニタリングするものです。これにより、運動神経の損傷による半身不随を防ぐことができます。言語機能の障害を防ぐには、「覚醒下手術」という方法があります。これは、患者に意識がある状態で、実際に会話をしながら手術を行うというものです。これにより、言語障害の危険を未然に防ぐことができます。現在においてもグリオーマの治療が困難なことに違いはありませんが、医療の側も日々進歩しているのですね。
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