糖尿病はさまざまな病気のリスクを高めます。血管の壁にコレステロールが堆積して血管が狭くなる動脈硬化もそのひとつ。動脈硬化は脳梗塞、心筋梗塞といった血管の詰まりを原因とした疾患を引き起こします。「閉塞性動脈硬化症」は足に症状が現れる病気ですが、脳梗塞や心筋梗塞と同様に血管の詰まりを原因とする疾患です。閉塞性動脈硬化症になると、足を流れる血液が不足し、悪化すると足を切断しなければならにこともあります。
連続して歩けない「間欠性跛行」
閉塞性動脈硬化症になると血流が不足するため手足が冷えるようになります。進行すると足に痛みが生じます。とくに歩行時に血行障害が起きやすく、筋肉が痛くなります。
こうなると痛みで長時間歩き続けることが困難です。しかし、しばらく休むと血行が改善して痛みが和らぎ再び歩くことができます。こうして休み休み歩くようになることを「間欠性跛行」(かんけつせいはこう)といいます。
閉塞性動脈硬化症かどうかは、足首と上腕の血圧の比を測るABI検査で調べることができます。軽症の場合は薬物療法や運動療法で改善を図ることができます。重症の場合はカテーテルという医療用の管を血管内に入れて詰まったところを広げる治療や、外科手術で血液の迂回路(バイパス)を作る治療を行います。下肢の壊死を防ぐために緊急手術が必要な場合、あるいは、救命のためにどうしても下肢を切断しなければならない場合があります。
間欠性跛行は閉塞性動脈硬化症の代表的な症状ですが、同じような症状は整形外科系の疾患にも現れます。
腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行
高齢になると、背骨の「脊柱管」という部分が狭くなり、中を通っている神経が圧迫されます。これを「脊柱管狭窄症」といいます。腰付近の脊柱管が狭くなる「腰部脊柱管狭窄症」になると、腰だけでなく足にも痛みや痺れが生じます。その結果、休み休みでなければ歩けない間欠性跛行が生じます。間欠性跛行は閉塞性動脈硬化症に見られる症状ですが、同時に腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状でもあります。足に痛みを感じた人は足や腰に原因があると考えて整形外科を受診することが多いはずです。もちろん、実際にそうであるケースも多いでしょう。問題は整形外科系の疾患だと思い込んでいたところ実際には血管系の疾患だったという場合です。
脊柱管狭窄症はQOL(生活の質)を低下させる疾患ではありますが、足を切断したり、死に至るようなことにはなりません。一方、閉塞性動脈硬化症にはその可能性があります。閉塞性動脈硬化症は重要な病気なので、整形外科の先生もこの点には十分な注意を払っているはずですが、自分でも血管系の病気の可能性があることを知っておきましょう。特に糖尿病の人は動脈硬化が進行しやすく、そのリスクが高いので十分な注意が必要です。
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