巨人・二岡智宏2軍打撃コーチが「縦隔腫瘍」の摘出手術を受けたそうです。しかし、医師からは「悪性ではない」、つまり癌ではないと伝えられており、深刻な状況ではないそうです。良性腫瘍であれば、少なからず苦痛を伴う手術を行ってまでしてこれを取り除くのはなぜなのでしょうか。おそらく、放置しておくと困ったことが起きるからなのでしょう。
心臓に近い、とても重要な場所「縦隔」
まず、縦隔とは、ひとことでいうなら「心臓の近く」ということになります。心臓はとても重要な臓器なので、外から簡単には侵入できないような構造になっています。前面を胸骨、後面を背骨、左右を肋骨によって守られた場所を胸郭といいますが、縦隔は特に左右の肺の間のスペースを指します。
縦隔腫瘍は特定の臓器から生じるものではなく、このスペース内に生じた腫瘍なら、どの臓器に由来していても縦隔腫瘍と呼ばれます。縦隔腫瘍は多彩ですが、数の上からは約半数近くを胸腺腫瘍というタイプが占めています。
最も多いのは良性の胸腺腫というタイプ
縦隔腫瘍の中で最も多く見られる胸腺腫瘍には、良性の胸腺腫と悪性の胸腺がんがあります。細かな割合を見ていくと、良性の胸腺腫が縦隔腫瘍全体の39%を占めるのに対して、悪性の胸腺がんは全体の6%に過ぎません。二岡コーチがどのタイプの縦隔腫瘍だったかは不明ですが、ここでは多数派の胸腺腫と想定して話を進めてみましょう。
胸腺腫を放置した場合
胸腺腫の多くは無症状です。しかし、大きくなると周辺の臓器を圧迫して胸部や背部の痛みや、呼吸困難感を引き起こします。この他、大血管が圧迫されれば顔面がむくみ、脊髄が圧迫されて上下肢がしびれることもあります。また、食道が圧迫されると食べものを飲み込む嚥下機能が低下します。
このように胸腺腫を放置した場合は、それが大きくなったときに周囲の臓器を圧迫してさまざまな不都合が生じます。中には急激に巨大化して肺に穴をあけたり、胸膜炎を引き起こすこともあるそうです。縦隔はとても重要な臓器がひしめく場所なので、こうした不安材料は取り除いて置いた方が良いのです。
また、胸腺腫は、筋肉が疲労しやすく、疲れてくると物が二重に見える重症筋無力症との関係も指摘されています。重症筋無力症は胸腺異常と密接に結び付いた病気で、20~30%に胸腺腫が認められるそうです。胸腺腫を摘出することは重症筋無力症の治療にもなります。
縦隔腫瘍の中でも特に多い胸腺腫は放置しておくと大きくなって、他の臓器を圧迫する危険があります。また、重症筋無力症とも関係しています。こうした理由で、たとえ良性であっても摘出することが勧められています。二岡コーチは、医師から良性なので心配はいらないと伝えられたということです。摘出が上手くいったことで、良性腫瘍によって引き起こされるトラブルの心配もなくなりました。後は療養して回復を待つばかりといえるのではないでしょうか。
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