米カリフォルニア州在住の男性は、脳にサナダムシの幼虫が寄生したのが原因で激しい頭痛を訴えたそうです。寄生虫というのはもともと気持ちのよいものではありませんが、それが脳に……。考えただけでもゾッとします。危険を避けるにはどうしたら良いのでしょうか。
加熱しない肉やレバーが危ない!?
農林水産省はサナダムシに関して、次のように注意を促しています。「肉やレバーには、サナダムシの一種などの寄生虫がついていることがあり、充分に加熱せずに食べると腸管内などに感染して腹痛や下痢などをおこすことがあります。特に、豚肉や豚のレバーにいる寄生虫には注意しましょう」
戦後の衛生状況が悪かった時代には、寄生虫で健康被害を起こす人は少なくなかったそうです。衛生環境の整った現在では、寄生虫の被害は身近なものではなくなりました。しかし、グルメ志向も手伝って、さまざまな食材を生で食べることも行われています。魚介類や、とりわけ生レバーは寄生虫の危険性が高いと考えられます。サナダムシのほかにも、サケ、タラ、サバ、イカの生食によるアニサキスへの感染が報告されています。
なぜ、脳に寄生?
寄生虫は宿主であるヒトを殺してしまっては自分も生きてはいられません。そのため、進化の過程で、宿主に害を与えないような寄生の仕方、場合によっては何らかの利益をもたらす寄生の仕方を身に着けていると考えられます。
例えば。ダイエットに効果的として意図的にサナダムシを寄生させる方法もあります。現在でも韓国などでは行われているそうです。サナダムシは長いものでは10メートルにもなり、体表から栄養素を吸収します。サナダムシが栄養を吸収してくれるのでその分痩せられます。また、お通じが良くなるという説もあります。
これは共生可能な寄生の例ですが、危険なケースはどのようなものでしょうか。それは本来寄生すべきでない部位に定着してしまった場合です。米カリフォルニア州在住の男性の場合も、サナダムシが本来寄生すべきでない脳に侵入してしまいました。
この他にも、脳の中に寄生虫が発見されたニュースとしては、2014年、中国で10歳の男子2人の脳内に「芽殖孤虫」という寄生虫が見つかった事例がありました。芽殖孤虫はヒトを終宿主とはしておらず、ヒトの体内では成虫になれません。そのため、幼虫のまま体内を移動して危険な症状を引き起こします。このとき寄生虫は消化管から入って、まず眼に移動し、そこから脳に侵入したと考えられます。
寄生虫が危険なのは、ヒトを終宿主としないタイプが侵入した場合、本来寄生すべきでない部位に寄生した場合、だといえます。しかし、どのタイプの寄生虫がどこに侵入するのかをコントロールすることはできません。危険性を伴う魚介類や豚肉、豚レバーの生食には十分に注意を払うべきでしょう。
参考:寄生虫による食中毒に気をつけましょう(農林水産省)(http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/parasite.html)
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