3月21日、声帯模写の第一人者である四代目江戸家猫八さんが進行胃がんで亡くなられました。「進行」胃がんが、進行していない胃がんに比べて深刻な状況であることは見当がつきますが、いったいどの段階から「進行胃がん」になるのでしょうか。
「進行」かどうかは胃がんの深さで決まる
「進行胃がん」の定義は次のようになります。
「胃がんの深さが粘膜下層を越えて固有筋層より深くに及ぶ場合」
初期のがんはまず胃の粘膜の表面にできます。進行するにつれてより深いところまで浸潤していきます。浸潤というのは、がんがどんどん広がっていくことです。順番としては、進行にともなって粘膜表面→粘膜下層→固有筋層→漿膜→多臓器と浸潤していきます。
粘膜下層にまで胃がんが浸潤しているが固有筋層には達していないものを「早期胃がん」といいます。固有筋層にまで達したものが「進行胃がん」です。
進行胃がんとステージの関係
がんの広がりを示す基準をステージ(病期)といいます。がんは統計データをもとに部位によってステージごとの生存率が示されています。胃がんの場合には次のようになります(少し簡略化しています)。
<胃がんのステージ>
1A期……リンパ節転移がないか、がんが胃の粘膜にとどまっている場合
1B期……がんが筋層まで達しているがリンパ節転移がない、もしくは、リンパ節転移があるが筋層まで達していない
2期……がんが筋層まで達してリンパ節転移がある、もしくは、リンパ節転移はないが漿膜まで達している
3A期……がんが漿膜まで達してリンパ節転移がある、もしくは、がんが多臓器に浸潤しているがリンパ節転移がない
3B期……がんが漿膜を超えて多臓器に浸潤し、リンパ節転移もある。
4期……もっとも外側のリンパ節にまでがんが転移。遠隔転移がある。
先の定義に従うと、はっきりと「早期胃がん」といえるのは1A期だけになるのではないでしょうか。次の1B期になると筋層にまで達した「進行胃がん」(※ただしリンパ節転移はない)が含まれてくるからです。こうして見てみると、「進行胃がん」が示す範囲は非常に広いことが分かります。
早期胃がんであれば条件次第で内視鏡を使った比較的負担の少ない手術を選択できます。これに対して進行胃がんでは、内視鏡手術は選択できず基本的には開腹手術または腹腔鏡手術となります(さらに進行すると手術を行えないケースも出てきます)。なお、筋層にまで達していない早期胃がんであってもリンパ節転移がある場合は内視鏡手術を行うことはできません。
以上から、進行胃がんとは、
・がんが固有筋層よりも深くに及び
・治療で内視鏡手術を選択できず
・ステージでいうと基本的に2期以降を指すが1B期の一部を含む
段階ということになるでしょう。