実は放射線治療を完了していた麻央
小林麻央さんは12月7日のブログで25日間の放射線治療を終えたことを報告しました。放射線をかけたのは胸、脇、鎖骨、首の半分あたりまでとしています。放射線治療にはいくつもの種類がありますが、正常組織への影響を避けながら複数の病変をたたくことができるトモセラピーというものがあります。トモセラピーは重粒子線治療や陽子線治療のように大規模な設備が必要なわけではなく、また総合病院のような大きな病院だけでなく、比較的小さなクリニックでも導入しているところがあります。
麻央さんが実際にトモセラピーを選択したかどうかは不明ですが、根治を宣言していたことを考えると、有力な候補になったと考えられます。
「温浴療法」という治療に言及していたので、てっきり代替医療に切り替えたかのようにも受け取れましたが、(ステージ4に対する明確なガイドラインはないものの)エビデンスに基づく治療である放射線治療も並行して着々と進んでいたことが分かりました。
小林麻央 残った肺と骨の腫瘍はどうする?
小林麻央さんは「根治」を宣言して治療を進めています。その大きな第一歩となったのが「局所コントロール」と呼ばれる手術でした。おそらく乳がんとリンパ節転移の切除に成功したものと思われますが、小林麻央さん自身が述べているように、肺と骨の転移は残っているため「根治手術」とはなりません。
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通常ステージ4で手術が行われることはなく、QOL(生活の質)を高める目的など一部の例外があるのみ。小林麻央さんがその言葉通りに根治を目指して手術をしたのだとすれば、乳がんとリンパ節転移の切除はいわゆる標準治療の目的を超えたものであるといえるでしょう。であれば、残った肺と骨に関しても根治を目指して手術が行うのだろうか?という疑問がわいていきます。
肺と骨の転移巣の切除手術は行わない可能性が高い
「ステージ4で手術をしても予後は変わらない」という現在の常識を打ち破るようにして局所コントロールを選択した小林麻央さんですが、同様にして肺や骨に対しても手術を行うかというと、その可能性はかなり低いと考えられます。
これらの腫瘍を手術で取り除くことは、あまりにも負担が大きくなるからです。例えば肺を切除して呼吸機能が低下してしまうとその後の闘病生活に必要な体力を奪ってしまう心配もあります。
そしてもうひとつ、最初にがんができた原発巣と、後から転移した転移巣では扱いが違うという理由もあります。乳がん治療のガイドラインにおいて、原発巣(麻央さんの場合は乳がんとリンパ節転移)の切除の推奨グレードはC1なのに対して、転移巣(麻央さんの場合は肺と骨)の切除の推奨グレードはC2となっています。
C1は十分な科学的根拠はないが試みてもよい治療、C2は科学的な根拠がないので勧められない治療です。今回、推奨グレードC1を試みたかに見える医療チームも、推奨グレードC2は採用しないものと推測されます。
ステージ4に対する放射線治療「トモセラピー」
小林麻央さんは「根治」を目指しています。つまり、体の中のがんを全て無くすために積極的な治療を続けるということです。しかし、推奨グレードC2となる転移巣(肺、骨)の切除手術は行われない可能性が高い。そこで選択肢として有力になってくるのが放射線治療です。
放射線治療は被ばくを伴いますが、外科手術のように臓器の一部を切除することによる機能低下は生じません。保険診療ではがんの大きさや数の限度が決められていますが、そうした条件に当てはまらない場合に、自由診療で対応する医療機関もあります。
できるだけ正常な細胞を避けながらがん細胞にエネルギーを集中させる放射線治療にIMRT(強度変調放射線治療)があります。IMRTのひとつであるトモセラピーは、治療ごとにCTスキャンで腫瘍の位置を把握し、コンピュータ制御のもとでピンポイント照射を行います。
小林麻央さんが根治を目指す以上、12月7日に終了したという放射線治療も腫瘍の消失を図る積極的な治療であった可能性があります。そして、いくつもある放射線治療の選択肢のなかで、麻央さんのようにステージ4に対する積極的な放射線治療としてトモセラピーは有力な選択肢となっていたのではないでしょうか。