2016年4月に亡くなんった米国のポップミュージシャン・プリンス(Prince)さんの死因が明らかになりました。ミネソタ州・検視官事務所の発表によれば、フェンタニルという鎮痛剤の過剰摂取による事故死とのことです。
フェンタニルは日本でもモルヒネやレミフェンタニルと共に、手術中や手術後の痛みの緩和に用いられている「オピオイド系」と呼ばれる薬です。ところで、オピオイドという言葉に聞いて、ある事件を連想した人もいるのではないでしょうか。
トヨタ自動車のアメリカ人女性役員が輸入した「オキシコドン」と同系統
フェンタニルと同系統の薬には、2015年6月18日にトヨタ自動車のジュリー・ハンプ常務役員逮捕の原因となった「オキシコドン」があります。フェンタニルもオキシコドンも共に強力な鎮痛作用を持ちますが、常用すると薬物中毒になります。医療における有用性が明らかな一方、日本に比べて規制の緩い米国では乱用が社会問題化し、2016年3月に鎮痛剤処方のガイドラインが新たに公表されています。
オピオイド系鎮痛剤の副作用
オピオイド系鎮痛剤には次のような副作用があります。
・便秘
・嘔吐
・眠気
・めまい
・排尿障害
・呼吸抑制
便秘や嘔吐は比較的頻繁に見られる副作用です。大量に投与すると呼吸や心臓が停止して生命にかかわることがあります。フェンタニル製剤にはフェンタニル静注薬とフェンタニルパッチの2種類があり、日本ではがん性疼痛に対してのみ保険適用となっています。
薬物治療と薬物中毒の境界が曖昧なオピオイド系
米国では鎮痛剤の処方が原因で16万5000人が亡くなっているそうです(1999年~2014年)。そして、2000年以降のヘロイン乱用者の75%が、オピオイド系鎮痛剤の乱用をきっかけとしているといいます。オピオイド系鎮痛剤はヘロインなどの薬物の代替物となり、また、より強力な薬への橋渡しにもなります。米国におけるオピオイド系鎮痛剤の使用は、それが薬物治療なのか薬物中毒なのかの境界が曖昧になっています。
プリンスさんがオピオイド系鎮痛剤「フェンタニル」によって亡くなられたことは、米国においては決して珍しい事例とはいえないようですね。
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