ザ・フォーク・クルセダーズとして活躍した「はしだのりひこ」さんがパーキンソン病のため亡くなったことが報道されました。パーキンソン病は高齢者がかかる病気としてアルツハイマーと比較されることがあります。アルツハイマーが物忘れをはじめ認知機能に関わる病気なのに対して、パーキンソン病は運動症状が特徴で必ずしも認知症を伴うわけではありません。パーキンソン病と診断されてから10年後に認知症を発症する可能性は46%であるとの報告があります。
パーキンソン病にかかると余命は低下するとされていました。しかし、近年では平均寿命とほとんど変わらないといわれています。このような違いが出るのは、パーキンソン病が直接の死因になるわけではなく、多くは高齢者特有の他の死因によって亡くなっており、その他の病気に十分注意し適切にケアすれば余命を著しく縮めるのを避けられるためです。パーキンソン病と診断される人の年齢は60歳頃が多く、ちょうど癌その他の疾患リスクが高くなる年齢でもあります。また、さらに高齢になれば肺炎のリスクが高くなります。
ここではパーキンソン病の症状と、パーキンソン病によって亡くなるケースはどのようなものなのかを見てみましょう。
パーキンソン病は運動症状に特徴がある
難病情報センターの記述をもとにパーキンソン病の特徴をまとめてみましょう。
パーキンソン病の原因
パーキンソン病を発症するとき脳内で次のようなことが起きていると考えられます。
- αシヌクレイン
- αシヌクレインというタンパク質が蓄積することでドパミン神経細胞が減少します
- ドパミン神経細胞
- ドパミン神経細胞の減少によって体が動きにくくなったり、ふるえが起きやすくなったりします
パーキンソン病の症状
パーキンソン病の症状の特徴としては、椅子などに座って静止しているときに震えが起きる「振戦」があります。歩き出すときの一歩目が出しにくくなる「すくみ」もあります。パーキンソン病の代表的な症状は次の通りです。
- 固縮…筋肉が硬くなります
- 無動…動きが遅くなります
- 振戦…手足がふるえるようになります
- 姿勢反射障害…体のバランスが悪くなります
パーキンソン病で注意すべきは誤嚥性肺炎
日本人の死因の1位は癌ですが、70歳を超えると肺炎による死亡が癌による死亡を上回ります。特に要介護の人にとって肺炎は非常に警戒すべき病気といえます。
パーキンソン病は高齢の人がかかる病気のため、同様に肺炎による死亡リスクが伴います。また、健康な人に比べて次の点で肺炎を発症しやすいといえます。
- 誤嚥性肺炎を起こしやすい
- パーキンソン病は食べ物を飲み込む力が弱くなります。そのため高齢者に特有の誤嚥性肺炎のリスクがあります。誤嚥性肺炎とは、細菌を含んだ食べ物や唾液が誤って肺に入ることで引き起こされる肺炎です。食べ物が気管に入りそうになると反射的に咳が出ますが、高齢になるととっさに咳が出にくくなり、誤嚥が起きやすくなります。
- 転倒しやすい
- 寝たきりの生活は体力を低下させて肺炎の発症リスクを高めます。高齢者が寝たきりになる原因の多くは転倒によるものです。中でも転倒したときに脚の付け根の骨を骨折する大腿骨頸部骨折が多いとされています。パーキンソン病は歩く能力が低下するため、健康的な高齢者に比べて転倒リスクが高くなると考えられます。このことは同時に、寝たきりになるリスク、肺炎になるリスクが高いことを示しています
手術や薬物療法によるパーキンソン病の治療
パーキンソン病の手術療法としては「脳深部刺激治療(DBS)」が保険適用となっています。この治療は脳深部に電極を留置して高頻度に刺激することで問題となる神経細胞の活動を休ませることができます。神経細胞を破壊する方法に比べリスクは低いとされていますが、体内に異物を入れることによる感染リスクや装置の断線リスクがあります。また、このような治療を行う医療機関は限られており、一般的には薬物療法が行われます。
薬物療法の種類
パーキンソン病はドパミン神経細胞の減少が原因です。そのため脳内のドパミンを薬で補充することが治療につながります。代表的な薬にはレボドパがあります。また、レボドパを長期間使用したときに起きる薬効の変動や自分の意志とは関係なく体が動く「ジスキネジア」といった副作用を抑えた薬がドパミンアゴニストです。効果が早く出るのはレボドパのため、副作用が比較的出にくい高齢者にはレボドパを使い、若年層にはドパミンアゴニストから使い始めることが多いようです。パーキンソン病の薬物療法は次のような薬を組み合わせて行います。
- L-dopa(レボドパ)
- ドパミンアゴニスト
- 抗コリン薬
- 塩酸アマンタジン
- ゾニサミド
- アデノシン受容体拮抗薬
- MAO-B阻害薬
- カテコール-O-メチル転移酵素(COMT)阻害薬
- ドロキシドパ
(難病情報センターHPより抜粋)
パーキンソン病のまとめ
パーキンソン病を発症しても直ちに寝たきりになったり、認知症になったりすることはありません。パーキンソン病は長く付き合う必要のある病気といえます。そして、適切に治療を行うことによって天寿を全うできると考えられています。運動機能が衰えるパーキンソン病においては早期のリハビリも重要です。パーキンソン病の診断は神経内科で受けることができます。