落語家の桂歌丸さんが2018年7月2日、慢性閉塞性肺疾患のため亡くなられました。酸素吸入器をつけたまま高座に上がり続けたと報道されています。
歌丸さんは腸閉塞とその合併症と思われる肺炎のため入院を繰り返していたそうです。このように聞くと、「無理がたたった」と思われるかも知れませんが、あながちそうとも言えません。むしろ、最期を迎えるまで生きがいである落語を思い、体力の限り活動を続けることは賢明な選択肢だったように思われるのです。
以下はその理由です。こちらは2016年7月、桂歌丸さんが腸閉塞で再入院した際に書かれた記事になります。年齢、腸閉塞、肺炎の関係を見ていただけたらと思います。
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2015年6月1日に褥瘡(じょくそう)の手術のために入院した落語家の桂歌丸さん。退院後も体力低下や腸閉塞のためにすぐに再入院。同年7月11日に退院しましたが腸閉塞の治療は続けていました。
それからおよそ1年が経過した2016年7月、桂歌丸さんが腸閉塞のため再び入院することが分かりました。こうなると、腸閉塞も心配ですが、生死を左右する肺炎が特に心配になってきます。
腸閉塞の合併症「肺炎」の危険性
桂歌丸さんは褥瘡を経験しています。褥瘡というのは悪化した床ずれのこと。寝たきりの人に多い病気です。桂歌丸さんは寝たきりではありませんが、褥瘡を発症したということは日々の生活における活動レベルが低く、寝ている時間が多いのではないかと推測されます。
寝ている時間が多い人が腸閉塞になると、肺炎を発症する危険が高くなります。腸閉塞の手術を行うと痰が多く出ます。活動レベルの高い人であれば痰をスムーズに排出することができますが、寝ている時間の長い活動レベルの低い人は痰が詰まりやすく、気管支や肺に入って肺炎を発症する危険も高くなります。
70歳以降はがんよりも多くなる肺炎の死亡率
肺炎の死亡率は年齢が高くなるほど上昇し、70歳以上では、肺炎で亡くなるひとががんで亡くなるひとを上回ります。肺炎は高齢者にとってただでさえ危険な病気。そこに活動レベルの低下が加わればリスクはさらに上昇。そして、腸閉塞の手術によって痰が多く出ればなおのこと危険ということになります。
桂歌丸さんは、
・79歳の高齢者である
・褥瘡を発症するほど活動性が低い
・腸閉塞の手術で痰が多く出る
というように、肺炎発症のリスクが重なっています。この段階では、じっとして何もしないことが最も危険かもしれません。桂歌丸さんは「8月中席」(8月11日から東京・国立演芸場で開催)での復帰を目指しているとのこと。復帰のために病気を治すというよりも、病気を悪くしないためにも復帰することが必要です。寝ている時間を減らし、活動レベルを高め、再び元気な姿を見せてくれることを願います。
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この記事の後、歌丸さんは元気な姿を見せてくれました。亡くなられたのは大変残念ではありますが、落語を続けることではりあいを失うことなく、天寿をまっとうされたのでしょう。ご冥福をお祈りいたします。
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