川喜多美子が受けた臍帯血移植とは
D-DAYのボーカル、川喜多美子さんが急性骨髄性白血病のため「さい帯血移植」を受け、現在は無菌室で面会謝絶と報じられています。臍帯血移植というのは聞きなれない治療法です。また、無菌室、面会謝絶というのも気になります。
まず、さい帯血とは出産時に赤ちゃんとお母さんをつなぐへその緒や胎盤に含まれている血液のことで、採取できる量が限られているので非常に貴重です。
さい帯血には赤血球、白血球、血小板などのもととなる造血幹細胞が含まれており、これを移植することで白血病治療を治療するのがさい帯血移植です。
さい帯血移植は、自分のさい帯血を民間バンクで保管していた場合か、「HLA」と呼ばれる白血球の型が一致したドナーから提供を受けることで可能となります。
さい帯血移植は患者の負担も大きい治療
さい帯血移植を受けるには、患者の白血病細胞とともに正常な造血細胞を駆逐してしまう必要があります。前処置と呼ばれるこの工程では、全身の放射線照射や大量の抗がん剤投与が行われます。前処置は非常に強力で、これによって腎臓や肝臓の機能低下、心臓や肺の障害などが生じる可能性があります。
さらに、移植後には移植片対宿主病(GVHD)が高い確率(後述)で発生します。移植片対宿主病(GVHD)は、移植したドナーの細胞に含まれるTリンパ球が免疫反応によって患者自身の臓器を攻撃するものです。この移植片対宿主病(GVHD)を防ぐため、免疫抑制剤によってTリンパ球の働きを抑制します。免疫反応を抑えることは移植片対宿主病(GVHD)の予防に役立つ一方、免疫力低下による感染症のリスクが高くなります。そのため無菌室で面会謝絶が必須となるのです。
さい帯血移植後の生存率
ステムセル研究所HPにさい帯血移植後の生存率が記されているので引用します。
<1年生存率>
兄弟姉妹間の移植の場合……82%
非血縁者の移植の場合……61%
<急性GVHD発生率>
兄弟姉妹間の移植の場合……25%
非血縁者の移植の場合……43%
非血縁者の移植に比べ、兄弟姉妹間の移植では移植片対宿主病(GVHD)が生じる確率が低く、生存率も高いことが分かります。さい帯血移植はそれが成功した場合でも非常に苦しい治療です。闘病中の川喜多美子さんがこれを乗り越えてくれることを願いましょう。