2015年6月12日、豚レバーが禁止されました。報道では、禁止される前に最後の豚レバーを食べる人たちが紹介されなど、話題となったことは記憶に新しいかと思います。
豚レバー禁止の原因になったのは「E型肝炎ウイルス」でした。B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは肝硬変や肝臓がんについては耳にする機会も多いのですが、E型肝炎ウイルスというのは耳慣れないものでした。性質もB型やC型とは異なり、急性肝炎を生き起こす危険なウイルスではあるものの、慢性肝炎を引き起こすことはないと考えられていました。肝臓がんは急性肝炎からではなく、慢性肝炎から発展します。従って、E型肝炎ウイルスは肝臓がんとは関係ないと考えられていました。そのような認識が今、変わろうとしています。
従来考えられていたE型肝炎ウイルスの危険性
E型肝炎ウイルスはB型やC型のように血液からではなく、衛生状態の悪い水や食品から感染するものとされていました。
水や食品を介してE型肝炎ウイルスに感染すると、40日程度の潜伏期間の後に急性肝炎を発症します。肝臓の炎症によって肝細胞の破壊が進み、肝機能が低下、劇症化すると死亡することもあります。嘔吐、発熱、黄疸(おうだん)、悪心、食欲不振、腹痛と腹部の圧痛などの症状を伴います。……と、ここまでは従来理解されていたE型肝炎ウイルスの概略ですが、新たな感染経路が報告されました。
臓器移植でE型肝炎ウイルスによる肝炎が慢性化
厚生労働省研究班は、肝臓移植を実施している全国17機関で移植手術を受けた1893人の患者を調査しました。その結果、ウイルス遺伝子量が測定できた1651人の内、生体肝移植を受けた60代女性と40代男性に慢性肝炎が見つかったといいます。2人は臓器移植に伴う輸血を通じて感染したと考えられています。この調査はアジア圏で初となる移植後患者のE型肝炎感染の実態調査として9月21日付けの「EBioMedicine」誌電子版に掲載されています。
臓器移植における特殊な状況を確認しておきましょう。臓器移植では他人の臓器を用いるために拒絶反応が生じます。そんため、移植手術にともなって拒絶反応を抑えるための免疫抑制剤を投与します。臓器移植患者の免疫力が低下することはこれまでも良く知らていた事実です。今回の、臓器移植に伴うE型肝炎ウイルスの感染についても、免疫力の低下が関係していると考えらています。幸いなことに、感染した2人は回復しているとのことです。
臓器移植というのは特殊なケースではありますが、これまで肝臓がんと関係ないとされてきたE型肝炎ウイルスに関しても、そうした危険性を考慮する必要が出てきました。肝臓以外にも、腎臓や腎臓の移植手術においても同様の危険がないかどうか調査が進められる模様です。
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