がんに罹った場合の治癒の可能性や生存率が、がんのできる部位や進行の程度(ステージ)によって異なることはよく知られています。そのため、がんがどれくらいの割合で治癒する見込みがあるのかを示す「5年生存率」は、部位ごと、ステージごとに区別して公表されています。ここで大切なのは、どのがんもおおむね「5年生存率」を参考に治癒の可能性を判断しているという点です。
2016年1月19日、国立がん研究センターなどの研究グループは、がん患者を10年間追跡して得られた「10年生存率」を初めて公表しました。この発表から読み取れるものはいくつもありますが、そのひとつに、「5年生存率」でがんの治癒を判断することの妥当性があります。少し詳しく見てみましょう。
5年生存率が判断基準になる理由
まず、そもそも5年生存率ががんの治癒を判断する上での重要な判断材料になる理由について確認しておきましょう。
がんが再発する場合、がんの治療を受けてから5年以内に再発することが多いといわれています。そして、再発すればがんによって亡くなる人もでてきます。反対に、5年経っても生存しているのであれば、命に関わる再発は生じておらず、がんは治癒していると見なしてもよいことになります。
また、がんの治療後の追跡期間を1年、3年、5年、10年、20年…と長くしていくに従って、がん以外の死因によって亡くなる割合も高くなり、がんを原因とする死亡なのかどうかが不明瞭になります。その意味でも、5年という期間は短すぎず長すぎず、がんの影響を判断するのに適していると考えられます。
10年生存率公表の結果から言えることは?
今回の発表によれば、「全てのがんの10年生存率は58.2%で、5年生存率より約5ポイント低い」とのこと。まず、5年生存率と10年生存率の違いが小さいほど、「5年生存率でがんの治癒を判断することの妥当性は高くなる」といえるでしょう。なぜなら、5年後までは多くの人が生きているが、その後、10年後までの間に多くの人が亡くなってしまうのであれば、5年後に生存しているかどうかを「がんが治癒しているか」の判断基準にすることはできないからです。
がん全体で見た場合、5年生存率と10年生存率の違いは約5ポイントなので、それほど大きな差異ではなく、5年生存率を治癒の判断材料とすることの妥当性が示されているといえるでしょう。しかし、がんは部位によって性質が異なることはよく知られています。当然、がんの部位によっては、5年生存率で治癒を判断しやすいものと判断しにくいものとが出てくるでしょう。
5年後以降の生存率が変わるがんと変わらないがん
最後に、5年生存率と10年生存率の違いが小さいがんと、違いが大きいがんを確認しておきましょう。
《5年後以降の生存率がほぼ横ばい》
・大腸がん
・胃がん
《5年後以降も生存率が下がり続ける》
・乳がん
・肝がん
大腸がん、胃がんは5年後以降の生存率が大きく変化しないため、「5年生存率」によって治癒を判断しやすいがんといえます。反対に、乳がん、肝がんは5年後以降も生存率が大きく変化するため、「5年生存率」では治癒を判断しにくく、より長期的なケアを必要とすることが分かります。
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