米国では13日のパリ同時多発テロを受け、難民受け入れに厳しい姿勢をとる不動産王のドナルド・トランプ氏が支持を集めているそうです。トランプ氏は、テロリストに対して、オバマ大統領が禁止した「水責め」の拷問について、「私なら復活させる」とABCテレビの番組で述べたといいます。
「水責め」の拷問ときくと、水槽のなかに無理やり顔を押し付けたり、高い水圧で痛みを与えたり、といったものを想像するかもしれません。しかし、CIAが実施していたことでも知られるこの拷問は、一見すると地味な印象を与えます。まず、問する相手を台などの上に固定し、足を上、頭を下にした状態にします。そして、鼻や口に水をそそぎます。水の中に沈めたり、大量の水をかけたりするわけではありません。ただ水を少しそそぐだけ……。これだけのことで、なぜ残酷な拷問になるのかを理解するには、「乾性溺水」というもののメカニズムを知る必要があります。
咽頭反射が引き起こす「乾性溺水」とは?
人が溺れると肺に水が入って、しばらくすると死んでしまいます。しかし、溺れ始めた直後は、喉が水で刺激されて咽頭反射が起き、声帯の痙攣によって肺への水の浸入を防ぐことができます。しかし、声帯の痙攣は同時に呼吸を止めてしまいます。肺に水を入れないようにして身を守るための反射によって、呼吸ができなくなってしまうことがあるのです。これを「乾性溺水」といいます。
手っ取り早く溺死を体験させる水責め
水責めという拷問は、水で喉を刺激して声帯の痙攣を引き起こすことを目的とするものです。声帯が痙攣すると呼吸ができず、まさに「溺死」を体験させられることになります。
拷問は自白を迫るためにさまざまな苦痛を与えるものですが、身体的にダメージを与える方法の場合は強い意志で抵抗されたり、また、死の恐怖を感じるほどのダメージを与えると命を落としてしまう危険があります。水責めは、もちろん生命に危険を及ぼす方法ではありますが、身体のダメージが少ない割りに、「溺死」という死の恐怖を手っ取り早く作り出すことができます。そのため、短時間で自白を強要できるとされています。
拷問というものは、どのような手法であれ残酷さを伴っているでしょう。その中でも「水責め」は、ある意味で非常に効率が良く、それゆえに冷酷で、不気味な残酷さを備えているといえます。それを踏まえると、トランプ氏の発言がどのように過激なものなのか、なぜ話題になるのかが理解できるような気がします。
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