歌手の西城秀樹さんが7月5日の「ノンストップ」(フジテレビ系)で壮絶なリハビリについて語っています。西城さんは2003年に脳梗塞を発症し、さらに、2011年に再発し、右半身まひの後遺症が残ったといいます。
壮絶なのはそのリハビリ方法で、激しい痛みを我慢しながら、
・踏み台昇降30回
・スクワット
・マシンで強引に筋肉を動かす
といったスパルタ式と思えるような訓練を続けているそうです。
「まひ」というと、痺れて感覚がない状態を連想するかもしれませんが、痛みが出ることが多いようです。脳梗塞後の後遺症で痛みが出るのはなぜでしょうか。
脳卒中後の患者の65%以上に発症する痙縮
脳梗塞になると、手足を動かしたり感覚を感じたりする神経が障害されます。これによって、感覚を失ってしまったり、手足が動かなくなってしまったりとさまざまな後遺症が出ます。
このとき、手足は動かなかったり感覚が無くなったりするだけでなく、硬くもなります。通常、関節を曲げるとき、筋肉の一方が緊張すれば、反対側が弛緩することでスムーズに動作することができます。ところが筋肉を動かす神経が障害されると、関節を伸ばすための筋肉と曲げるための筋肉が一度に緊張し、伸びないし、曲がらないという状態になります。また痛みの原因にもなります。痙縮は脳卒中後の患者の65%以上に発症するといわれています。
筋肉の反射が原因
筋肉は引き伸ばされると元に戻ろうとする反射を引き起こします。脳の機能が正常な場合は、この反射はコントロールされています。しかし、脳が正常に働かないと、筋肉にある筋紡錘(きんぼうすい)が筋肉の伸びを感知して、筋肉を収縮させてしまいます。
踏み台昇降やスクワットは、筋肉が自然に収縮する反射と、この反射を抑制する脳のコントロールが協調するとこで可能になります。筋肉が緊張しすぎる状態では動作もぎこちなく、違和感や痛みを感じます。
痙縮に対する治療には主に次の2つがあります。
<ボツリヌス療法>
ボツリヌス菌の毒素を弱めた薬を筋肉に注射することで筋肉を柔らかくします。1回数万円(保険適用)の注射で3カ月ほど効果が持続します。
<磁気刺激治療>
頭部に磁気刺激を与えて筋肉を柔らかくします。ただし、下肢に対する効果は確認されていないそうです。
筋肉を柔らかくして、こわばりが取れると、違和感や痛みがやわらぎ、動かしにくさも改善します。良いコンディションでリハビリを続けることで、体に正しい感覚や動きを記憶させることができると考えられます。西城さんの筋肉の緊張の度合いがどの程度なのか、また、西城さんがこうした治療を受けているかどうかは分かりません。ただ、報道を見る限り、ひたすら我慢のリハビリを行っているような印象を受けるので少し心配になりますよね。