12月15日、歌手で俳優の杉良太郎氏が大動脈弁狭窄症のため手術を行ったそうです。心臓の各所には「弁」が配置され、血液を送り出すときに開き、送り終わったら閉じることで血液の逆流を防いでいます。心臓弁膜症は、この心臓の弁に不具合が生じる病気です。
心臓の弁には、大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁の4つがあります。心臓弁膜症の病態には大きく分けて、弁が狭くなる狭窄症、しっかり閉じなくなる閉鎖不全症、この2つが同時に起きる狭窄兼閉鎖不全症があります。杉氏の場合は、4つの弁の内の大動脈弁が狭くなる大動脈弁狭窄症でした。
報道によれば、杉氏の大動脈弁の広さ(弁口面積)は1平方センチメートル以下にまで狭まっており(通常は3~4平方センチメートル)、最も重い症状に分類されるものだったそうです。また、肺炎で入院した際に心不全と診断されていることから、大動脈弁狭窄症は心臓のポンプ機能に影響を与える程度にまで進行していたと考えられます。ここでは大動脈弁狭窄症のリスクについて見てみましょう。
大動脈弁狭窄症から心不全へ
大動脈弁狭窄症は心不全と密接に結びついた心臓の病気です。血液の流れをコントロールする大動脈弁の機能が低下したときに何が起きるかというと、心臓が一時的にがんばって無理をし、やがてそれが続かなくなるという事態です。
大動脈弁狭窄症によって左心室の負荷が高まり、心筋が厚くなります。低下した機能を無理をして補おうとする「代償期」です。過剰な負荷が持続すると、機能低下を補うことができない「非代償期」に移行します。非代償期になると、心不全、不整脈などの症状が現れます。
手術をしないと2~3年の寿命!?
大動脈弁狭窄症に罹ると、症状が無い場合でも同年代の平均に比べて生存率が低下します。また、最初は症状が無くても5年以内に3分の2の人に症状が現れるそうです。
症状が出現した場合、手術をせずに内科的治療のみだと寿命は2~3年といわれています。こうした数字を見ると大動脈弁狭窄症において、手術がいかに大切かが良く分かります。
心臓弁膜症の手術には、弁を切ったり縫ったりして形を整える弁形成術と、人工弁に置き換える弁置換術とがあります。心臓のどの弁の手術をするかによっても方法は異なり、大動脈弁狭窄症の場合はほとんどが弁置換術となります。置き換える弁には機械弁と生体弁があります。機械弁は耐久性に優れるものの、ワーファリンという血液をさらさらにする薬を生涯のみ続ける必要があります。一方、生体弁はワーファリンは必ずしも必要ではありませんが耐久性では劣ります。
杉氏が出演する、TBS系ドラマ「下町ロケット」には「ガウディ」という純国産の人工弁をめぐるエピソードがあります。現実の世界でも、日本人の弁の大きさに合い、耐久性と生体適合性を兼ね備えた優れた人工弁の開発が求められています。
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