落語家の笑福亭笑瓶さんが木更津ゴルフクラブ(千葉県)でプレー中に体調不良を訴え、救急搬送されていたことが分かりました。病名は公表されていませんが、関係者の証言によれば、笑福亭笑瓶さんはプレー中に「胸が痛い」と訴えたそうです。そうなると、救急対応が必要な病気として真っ先に思い浮かべるのは狭心症や心筋梗塞といった心疾患ではないでしょうか。実際の病気が何であるかは病院で診断しなければ分かりません。その場でできることといえば、心筋梗塞や脳卒中といった、一刻を争う病気である可能性を考慮して直ちに病院に搬送すること。今回、関係者の対応は迅速でした。さらに幸運なことに、笑福亭笑瓶さんは「ドクターヘリ」を活用することができたのです。
救急車とは異なるドクターヘリの役割
笑福亭笑瓶さんが搬送されたのは君津中央病院。木更津ゴルフクラブはそこから約8キロの距離にありました。君津中央病院のホームページを見ると分かることですが、同院は平成21年1月19日にドクターヘリを導入しており、「千葉県ドクターヘリ事業の2機目の基地病院」なのだそうです。
「ドクターヘリで救急搬送」と聞くと、「ドクターヘリとはヘリコプターを使った救急車のことだろう」と想像する方がいるかもしれません。しかし、これは少し違っています。なぜなら、ドクターヘリには救急医療の専門医と看護師が同乗しているからです。救急車で対応するのは救急隊になりますが、ドクターヘリでは医師と看護師による医療を搬送中から受けることができるのです。なお、救急医療の専門医と看護師が同乗して患者を搬送する車のことをドクターカーといいます。
医師が同乗することの利点
ドクターヘリに医師が同乗することで、緊急手術を要する心筋梗塞や脳梗塞の診断を搬送中からスタートすることができます。正確な診断のためには病院到着後にCTやMRIによる検査を行う必要がありますが、そうした検査機器のセッティングやスタッフの確保について、ドクターヘリの中から指示を出すことができます。緊急手術が想定される場合は、病院側でその準備をあらかじめ進めておくことができます。つまり、ドクターヘリには、応急処置にとどまらず、病院到着後の検査や手術を迅速に進める役割があるのです。
直ちにドクターヘリを要請できる条件とは?
千葉県のドクターヘリ要請基準は平成24年3月に更新されたそうです。それまでは、ドクターヘリが必要かどうかを、現場に到着した救急隊が行っていました。新しい基準においては、次のような条件を満たす場合に、救急隊の到着を待たずにドクターヘリを要請できるようになりました。
・3m以上の高さからの転落、滑落、墜落
・20分以上続く激しい胸痛、心疾患の既往がある胸痛、突然の激しい胸背部痛
笑福亭笑瓶さんの場合は後者に該当するものと考えられます。ドクターヘリは全国38都道府県に46機(2015年8月時点)が配備されているとのこと。決して多い数字ではないですよね。そのようなドクターヘリが利用可能な状況だったことは、不幸中の幸いといえるのかもしれません。
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