歌手で音楽プロデューサーのプリンス氏が4月21日、米ミネソタ州の自宅兼レコーディングスタジオで亡くなりました。プリンス氏はエレベーターの中で倒れているのを発見されましたが、詳しい死因については報道されていません。
一般的に突然死の原因の大部分は心臓発作(心筋梗塞)と脳卒中といわれています。そして、プリンス氏は重度のインフルエンザで入院していたとされており、インフルエンザは心臓発作や脳卒中のリスクを高めることが分かっています。プリンス氏の実際の死因がそうであったかどうかは憶測の域を出ませんが、どの人にも当てはまる問題として、インフルエンザによる心臓発作・脳卒中リスクの増大については知っておいた方がよさそうです。
インフルエンザ超過死亡とは?
まず、インフルエンザによる死亡の特殊さについて確認しておきましょう。何らかの病気が原因で亡くなったとき、その病気が死因となります。胃がんで亡くなれば、胃がんが死因です。心筋梗塞で亡くなれば、心筋梗塞が死因です。インフルエンザで亡くなる場合はインフルエンザが死因となりますが、中にはインフルエンザの影響が大きかった場合でも別の病名が死因になることがあります。例えば、インフルエンザにかかったことで、持病の狭心症が悪化して心筋梗塞を引き起こした場合、死因は心筋梗塞となり、インフルエンザのことは記録に残らなくなってしまいます。
つまり、インフルエンザの影響による死亡数は、インフルエンザが死因であると報告される数よりもはるかに多いのです。これではインフルエンザによる正確な死亡数があいまいになってしまいます。そこで、世界保健機関(WHO)は「超過死亡」(excess death, excess mortality)という概念を導入しました。これは、インフルエンザが流行することによって、直接的であれ間接的であれ総死亡がどの程度増加するかを示すものです。このとき、診断書の死因が何であるかは問われません。
インフルエンザによって高まる合併症のリスク
インフルエンザを死因とする死亡数が年間1000例程度だとしても、超過死亡という観点からはその10倍近くの人が亡くなっていると考えられます。そして、インフルエンザの影響が非常に大きくなる疾患の代表が心臓発作と脳卒中。この2つの疾患で亡くなった人の中には、インフルエンザがきっかけで亡くなったといってもよい人がかなりの数含まれていると思われます。
イギリスのトム・ミード教授(ロンドン大学衛生熱帯医学大学院)は、心臓発作患者1万1155 人と脳卒中患者9208人のデータを元に、インフルエンザ(呼吸器感染症)との関連を調べました。
それによると、
・326人が心臓発作を起こす1カ月前までに呼吸器感染症(インフルエンザなど)の治療を受けていました。また、260人が脳卒中を起こす1カ月前までに呼吸器感染症(インフルエンザなど)の治療を受けていました。
報告によると、呼吸器感染症(インフルエンザなど)にかかった後は、
心筋梗塞で2.10倍の発症リスク増大
脳卒中で1.92倍の発症リスク増大
とされています。
さらに、呼吸器感染症に続く3日間に関しては、
心筋梗塞で 3.75倍の発症リスク増大
脳卒中で 4.07 倍の発症リスク増大
となるそうです。
インフルエンザは重い病気というイメージはあるものの、死因になるとはあまり考えられていないのではないでしょうか。しかし、インフルエンザをきっかけとする別の病気(心臓発作、脳卒中など)による死までを含めると、インフルエンザによる死は決してめずらしいものではありません。特に感染に続く3日間は心筋梗塞と脳卒中の発症リスクが跳ね上がります。もともとこうした疾患のリスクが高い人は特にインフルエンザへの対処に慎重になる必要がありそうですね。
HKT48宮脇咲良さんがインフルエンザ! タミフルは飲める? 10代の処方は禁止のまま?
子供のインフルエンザワクチンは優秀:たった○人に打てば1人の発症を防げる計算に!