お笑いコンビ「はんにゃ」の川島章良さんが「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(4月4日、テレビ朝日)に出演し、腎臓がんの手術を受けていたことを明かしました。
川島さんは2014年11月に腎臓がんが見つかり、15年1月に開腹手術で腎臓がんを摘出したそうです。腎臓がんは早期に発見された初期のがんとのことですが、「開腹」というのが気になりますよね。
例えば大腸がんであれば、初期のがんは内視鏡手術で治療でき、ある程度進行していても腹腔鏡手術が選択できます。開腹手術になるのはかなり進行してからです。また、前立腺がんにおいても腹腔鏡手術が広く行われており、やはり開腹手術となるのはかなり進行してから……。
腎臓がんに限っては、初期のがんに対して開腹手術を行う特殊な事情があるのでしょうか。
開腹手術を選択するケース「ステージ2以上の場合」
がんの進行状態を示すステージ(病気)はがんの種類によって分類の仕方が異なります。腎臓がんでは腫瘍の「大きさ」が重視されます。
<腎臓がんのステージ>
ステージ1…7センチ以下の腫瘍が腎臓内にとどまっている
ステージ2…7センチ以上の腫瘍が腎臓内にとどまっている
ステージ3…腫瘍が腎臓の外に広がっているが、周囲の脂肪は超えていない
ステージ4…腫瘍が周囲の脂肪を超えている。他臓器に転移がある
初期のがんであるステージ1とステージ2の違いは腫瘍の大きさ。その基準は7センチを超えるか超えないかです。
腎臓がんの最も確実な治療は、片側の腎臓を周囲の脂肪ごと摘出する根治的腎摘除術です。根治的腎摘除術を行う際は体の負担が小さい腹腔鏡手術を検討し、通常、ステージ1の多くは開腹手術ではなく腹腔鏡手術が選択されます。開腹手術を行うのはステージ2またはステージ3のことが多いといえます。
開腹手術を選択するケース「腎臓の一部を温存する場合」
腎臓がんにおいては、条件の良いステージ1のがんに対して「腎部分切除術」を行うことがあります。これは、片側の腎臓をまるごと摘出するのではなく、がんのある部分だけを取り除き、腎臓の一部を温存するというもの。手術を行っていない片側の腎臓と、手術を行った腎臓の一部が残るので、術後の腎機能低下を抑えることができます。
根治性が高いのは、片側の腎臓をまるごと摘出する根治的腎摘除術なので、あえて腎部分切除術を行うということは、それだけ予後が良いがんと判断されたことを意味します。
この腎部分切除術は基本的には開腹手術で行います。医療機関によっては腹腔鏡手術を採用することもありますが、その場合は腫瘍の大きさが4センチ以内という条件が付きます。
以上をまとめると、腎臓がんで開腹手術が行われるのは、
・腹腔鏡手術を選択できないステージ2以上の場合
・ステージ1で腎部分切除術が可能な場合
となります。
このように腎臓がん手術では、ある程度進行している場合と、反対に初期のがんで条件が良い場合とで、それぞれ異なる理由によって開腹手術が選択されるのです。
川島さんは初期のがんとのことなので、腎部分切除術が可能なステージ1の可能性も考えられます。しかし、報道によれば全摘、つまり片側の腎臓をまるごと摘出したとも言われています。そうだとすると初期の腎臓がんにも関わらず腹腔鏡手術でもなく、腎部分切除術でもなく、開腹手術で腎臓を全摘したことになります。
医療行為によって体に負担を与えたり、もともとある体の機能を損なったり低下させたりすることを「侵襲」(しんしゅう)といいますが、川島さんのケースではステージの低さに比べて侵襲はやや大き目という印象を与えるかもしれません。しかし、ステージは低くても患者個々人のコンディションを総合的に判断した結果開腹手術の方が望ましい場合もあります。あるいは侵襲の大きい小さいよりも、根治性を最優先する治療方針だったのかもしれません。いずれにしても、川島さんはかなり予後が良いケースと考えられるので、少し安心させられますね。
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