がんになると痩せてしまうことがよくあります。加えて、骨折しやすくもなるので注意が必要です。
慢性的な炎症状態で低体重に
がんになると多くの患者さんは体重が減少します。がんの告知を受けたショックで食が細くなったり、胃や腸など食べ物の消化吸収に直接かかわる臓器を切除した場合はもちろんですが、それ以外にも痩せる原因はあります。
がん細胞はエネルギーを過剰に消費する性質があり、体に必要なエネルギーをどんどん使ってしまいます。また、がんは全身の慢性的な炎症状態を引き起こし、その影響でエネルギー消費量が増えるのも痩せてしまう理由です。
がんによって体重が低下すると、骨折するリスクはそれだけ大きくなります。どの程度の低体重で骨折リスクが高くなるのかについては、「BMI 18.5未満」が危険とされています。BMIは「体重÷(身長×身長)」で計算することができます。日本人女性の平均的な身長である158cmの場合で考えると、体重が46kgとなった場合に、「46÷(1.58×1.58)=18.4」となり、低体重によって骨折リスクが高くなることが分かります。
続発性骨粗鬆症にともなう骨折
骨密度が低下して骨折しやすくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)には大きく分けて2種類あります。他の病気の影響なしで骨が脆くなる場合を「原発性骨粗鬆症」といいます。これに対して、他の病気や、その治療に使用される薬の影響で骨が脆くなることを「続発性骨粗鬆症」(ぞくはつせいこつそしょうしょう)といいます。
続発性骨粗鬆症を引き起こす病気には糖尿病などの生活習慣病、慢性腎臓病、関節リウマチなどがありますが、がんもその原因になります。乳がんや前立腺がんなどのように、骨を保護する働きのある性ホルモンが減少してしまうがんは、特に続発性骨粗鬆症を引き起こしやすいと考えられています。がんにかかると体重が減少するだけでなく、骨折しやすくもなります。不用意な転倒で骨折してしまわないように周囲の配慮も必要になります。骨が脆くなるのを防ぐには、禁煙・禁酒のほか、カフェイン、ビタミンAの摂取を控えること、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを十分に摂取することが有効だと考えられています。