漫画「家栽の人」の原作者・毛利甚八(57))さんが11月21日、食道がんのため亡くなられました。食道がんには「扁平上皮細胞がん」と「腺がん」の2つのタイプがあります。毛利さんを苦しめていたのがどちらのタイプだったかは報道からは分かりません。扁平上皮細胞がんの発症は飲酒の影響が強いといわれています。一方、腺がんに対しては、「バレット食道」という耳慣れないものが関係しています。ここでは後者について見てみることにしましょう。
食道がんの原因になるバレット食道とは?
私たちが飲み込んだ食べ物は食道、胃の順に進んでいきます。食道と胃はつながっています。しかし、食道と胃では粘膜の性質が異なっており、食道は扁平上皮という粘膜、胃は円柱上皮という粘膜になっています。バレット食道とは、本来扁平上皮であるはずの食道の粘膜が、胃の粘膜と同じ円柱上皮になっている状態を指します。
円柱上皮はサーモンピンクをしており、通常の食道の粘膜に比べて赤みが強いのが特徴です。バレット食道になると、胸やけや胸の痛みといった症状が出ます。特徴的なのは夜間にそうした症状が出る点です。そして、バレット食道が問題視される一番の理由は食道がん(腺がん)の原因になるためです。
逆流性食道炎が原因か?
胃酸が逆流して胸やけの症状を引き起こす「逆流性食道炎」は食道にダメージを与えます。胃は、強い酸性を持つ胃液から保護されるようにできていますが、食道はそうはいきません。繰り返し胃酸によって刺激を受けると粘膜が変化してしまいます。
食道の粘膜である扁平上皮は胃酸の刺激によって、円柱上皮という胃と同じ粘膜に変わります。これは胃酸に耐えるための防衛的な反応と考えられます。さらに、その一部は、腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)という腸と同じ粘膜に変わってしまっていることがあります。食道の粘膜に腸上皮化生が含まれるようだと食道がんを発症するリスクが高くなります。
ピロリ菌除菌で逆流性食道炎が増える!?
ピロリ菌は胃がんの原因になることで知られています。ピロリ菌を除菌することで胃がんを発症するリスクを軽減することができます。しかし、こと逆流性食道炎に関しては、ピロリ菌除菌はマイナスに働きます。ピロリ菌には胃酸の分泌を抑制する働き、酸の一部を中和してアルカリ性にする働きがあります。ピロリ菌が除菌されたことによって、胃酸の分泌が増え、酸度も上がるため逆流性食道炎になりやすいのです。ピロリ菌を除菌した人の約1割に逆流性食道炎が見られるといいます。
日本人に多い食道がんは「扁平上皮細胞がん」です。ここで見たバレット食道から発症しやすい「腺がん」は現在のところは稀です。しかし、欧米では両タイプの割合は半々だといいます。懸念されるのは日本人の胃酸の状況が変わりつつあることです。衛生環境が整ったことでピロリ菌の感染が減りました。また、胃酸の分泌を促す高脂質の食品の摂取も増えました。その結果、逆流性食道炎が増加し、これに伴い、少しずつではありますが欧米のようにバレット食道から腺がんを発症するケースも増えているそうです。バレット食道かどうかは検査で確かめることができます。ただ、治療法については模索されている段階だそうです。従って治すというよりも、警戒することに重点を置いた対応になります。バレット食道または逆流性食道炎が見つかった人は定期的に検査を受けるようにしましょう。
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