脊髄損傷の谷垣氏の病状が心配になってきました。というのも、当初は「軽傷」と発表されていたのに、その後、首の重要な神経にかかわる「頸髄損傷」であることが分かり、さらには、歩けるかどうかは分からないという発言まででてきたからです。
これは、
「意識ははっきりしており、合併症もなく経過は順調」
という当初の発表と両立するものなのでしょうか。
脊髄損傷① 合併症があるかどうかと、歩けるかどうかは別
「意識ははっきりしており、合併症状もなく経過は順調」と聞けば、多くの人は、たとえ今は入院中でもいずれはもと通りに回復すると思うはず。まさか、歩けるかどうかも確認できていないとは想像しなかったでしょう。
しかし、よくよく見なおしてみると、確かに、相撲中継を見ているとか、意識ははっきりしているとは言われていても、歩けるとはひとことも言われていないのです。意識ははっきりしており、「合併症」はなかったものの、歩けないなどの「後遺症」はある、という可能性もあります。
ここで重要になるのは「合併症」と「後遺症」の区別ということになるでしょう。
「合併症」…一過性で恒久的には残らない、治療できる不具合
「後遺症」…半永久的に残りうる不具合
脊髄損傷② 歩けないとしても、「合併症なし」が成立する理由
「合併症なし」の意味については、もう少し詳しく見ていく必要がありそうです。
合併症とは、ある病気から別の病気が生じることをいいます。例えば、糖尿病の人が網膜症や腎症、神経障害になれば、これらは糖尿病の合併症ということになります。
もうひとつ、手術や検査を行った際に生じるトラブルも合併症と呼ばれます。これには手術で血管や神経を傷つけてしまったり、検査薬の副作用で腎機能が低下したり、外科手術の傷口から感染症が生じたり、大腸を手術したときにそれが原因で腸閉塞を発症したり、といったケースが含まれます。また、こちらの意味での合併症は「手術併発症」「検査併発症」ともいわれます。
恐らく、谷垣氏の病状を説明する「合併症なし」は「手術併発症なし」の意味であり、単に手術に伴うトラブルがなかったことを伝えているにすぎません。
「意識ははっきりしており、合併症もなく経過は順調」という当初の発表を、補足しながら理解すると次のようになるでしょう。
「谷垣氏の手術は、血管や神経を傷つけることなく、感染症を引き起こすこともなく順調に進んだ。意識ははっきりしており、手術併発症による麻痺などの危険はない。しかしながら、頸髄損傷そのものから来る後遺症の有無については、当発表はその可能性を排除するものではない」
このように、歩けるかどうか分からないのに、「合併症もなく経過は順調」と発表することは嘘とはいえないものの、誤解を招きやすい表現ではあると思います。
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