重量挙げ女子48キロ級の三宅宏実さんが、リオデジャネイロ五輪を目前に腰痛に悩まされています。報道によれば、これまで避けてきた試合中の痛み止めを使用する方針とのこと。痛み止めの方法については語られていませんが、スポーツ選手が試合中によく用いるものに「ブロック注射」があります。
三宅宏実 腰痛① 痛み止めに使うブロック注射
ブロック注射とは、局所麻酔薬を注射する方法です。痛み止めを服用する場合とはことなり、問題のある部位に直接薬剤を送り込めるという利点があります。
ブロック注射にはいくつもの種類がありますが、脊髄に近い神経に働きかけ、速効性があるのが腰部硬膜外神経ブロック。椎間板ヘルニア、ぎっくり腰、腰椎すべり症、坐骨神経痛といった腰痛に幅広く使用されます。
腰部硬膜外神経ブロックを行うときは、エビのように体を丸め、まず、0.5ミリ程度の麻酔で注射の痛みを和らげる処置をします。次に、約0.9ミリの注射を腰の神経に向けて3~5センチ刺し、薬液を注入します。
三宅宏実 腰痛② ブロック注射の持続時間
気になるのは鎮痛作用の持続時間です。せっかくブロック注射を行っても試合中に効果が切れたら大変です。
まず、薬剤による麻酔の効果自体は数時間程度とされています。ただ、いったん痛みがリセットされることで、注射前の痛みに過敏な状態が改善され、また、血行も良くなっているのでそれ以上に痛みのない状態が続くことが期待できます。一般的には数時間から数カ月と、効果の範囲はかなり広く、多くは1週間程度とされています。
一般的な腰痛に対しては、ブロック注射を複数回繰り返します。次第に効果の持続時間が長くなり、いずれは痛みそのものが消失することも期待できますが、反対に効果が出ない場合もあります。
三宅宏実 腰痛③ 試合中に効果は切れない?
ブロック注射は本来、一時的な痛み止めではなく、繰り返し行うことで痛みそのものを消すことを目的とした治療の側面があります。ただ、三宅さんの場合は試合中の使用です。治療目的というよりも、その場を乗り切るための緊急措置といえるでしょう。
三宅さんの競技は重量挙げ。競技中に強烈な重量が腰を襲います。そうなると、麻酔が効いている数時間しか鎮痛効果がなく、可能性は低いとはいえ試合中に痛みが出ないとも限りません。まして試合後に残るダメージも心配。三宅さんは「一発に賭ける」と発言していますが、ブロック注射の効果、その後の体への影響に関しても少なからず賭けの要素があるといえそうです。