厚生労働省は11月25日、「HAL医療用下肢タイプ」(CYBERDYNE株式会社 )が薬事承認されたことを伝えました。
対象となるのは、次の8つの「緩徐進行性の神経・筋疾患」です。
1)脊髄性筋萎縮症(SMA)
2)球脊髄性筋萎縮症(SBMA)
3)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
4)シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)
5)遠位型ミオパチー
6)封入体筋炎(IBM)
7)先天性ミオパチー
8)筋ジストロフィー
参考:HAL医療用下肢タイプを承認しました(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000105014.html)
ロボットのサポートが「介護」ではなく「治療」になる理由
薬事承認された「HAL医療用下肢タイプ」は下肢に装着することで歩行をサポートし、筋肉が衰えて自力では歩けない人でも歩行ができるようにするものです。そんな便利なものがあれば、「さぞかし介護に役立つだろう」と思われる人も多いでしょう。
しかし、HAL医療用下肢タイプの目的は治療することにあります。患者はこのロボットに支えられ続けるのではなく、やがてロボットが必要なくなるまでに回復するのが理想です。なぜ、そのようなことが可能なのかというと、このロボットは、あくまでも患者自身の意志によって動くからです。
もし、患者の意志とは無関係にただ身体をサポートするのであれば、患者は完全に受動的な立場になるでしょう。ところが、HAL医療用下肢タイプは患者の意志に反応して動くため、患者は自分自身の動作に対して能動的な立場になります。身体を支えられるとう意味では受け身ではありますが、あくまでも動作の主体は患者本人です。つまり、まず動く意志を持ち、それに応じて身体が動き、身体が動いていることを感覚するという、健常者の場合と同じプロセスで動作を行うことができるのです。
下肢が不自由になる原因として多い脳・神経系の疾患では、脳が脚を動かすための神経経路を上手く使えなくなっています。正しい神経経路を学習するには「歩行の成功」が最良の刺激になりますが、これまでそのような条件を生み出すことは困難でした。健常者と同じように動作を行うHAL医療用下肢タイプを活用すれば歩行の成功体験を積み重ねることができます。繰り返し動作することで、脳と身体とのつながりを再び獲得することができるのです。
生体電位信号を読み取って動くHAL医療用下肢タイプ
通常、脳は神経や筋肉にさまざまな信号を送ることで身体の動きを実現しています。こうした脳の信号を読み取るために、直接脳にアクセスしなければならないかというと、そんなことはありません。なぜなら、脳からの信号は皮膚表面から、「生体電位信号」として漏れ出ているからです。HAL医療用下肢タイプはこれを読み取ることで、患者の意志に合わせて動くことができるのです。
CYBERDYNE公式ホームページによれば、HAL医療用下肢タイプとは、「歩きたい」「立ちたい」という思いに従って装着者の脚を動かし、「歩けた」「立てた」という感覚のフィードバックをタイミングよく行うことで脳の学習を促すものです。このような日本発の最新のテクノロジーによって、これまで歩けなかった人が歩けるようになったらいいですよね。
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