覆面レスラー・ハヤブサ選手として活躍した江崎英治さんが3月3日、「くも膜下出血」のため亡くなられました。ハヤブサ選手はFMW後楽園ホール大会(2001年10月)でムーンサルトに失敗したのが原因で頸椎を損傷し、車椅子生活を余儀なくされていました。そして今回の死因は「くも膜下出血」。同じく頭頸部の疾患です。この2つの疾患の間に関連があるかどうかが気になるところです。
くも膜下出血と頸椎損傷が同時に起きることはある
現在、乳がんの闘病生活を送っている北斗晶さんも、現役時代には首の骨を損傷し、数カ月間寝たきり生活を送っていました。プロレスラーはバックドロップなどで投げられたときや、ムーンサルトなど自ら高いところから飛び降りる際に頭や首に深刻なダメージを負うことがあります。頭と首を同時に負傷することも珍しくありません。
さらに、2001年のハヤブサ選手の事故のような頸椎損傷と今回のようなくも膜下出血が同時に起きるケースもあります。例えば2015年7月には、女子プロレスラー・優華選手(アイスリボン所属)が試合中の頭部強打が原因で外傷性くも膜下出血および頸椎挫傷と診断されています。
外傷性くも膜下出血は再発しにくい
問題はハヤブサ選手のくも膜下出血が優華選手の場合のように「外傷性」のくも膜下出血かどうかです。2001年の試合中の事故からは随分と時間が経っているので、「外傷性」であったとすれば、過去に出血した部位がもう一度出血する「再発」ということになるでしょう。しかし、一般的には外傷性くも膜下出血は再発しにくいといわれています。
くも膜下出血では、頭蓋骨の内側で脳を覆っている3層の髄膜の内、クモ膜と軟膜の間のクモ膜下腔という空間に出血が起きます。交通事故で頭部を強打するなどした際の衝撃が原因で出血するのが外傷性くも膜下出血です。しかし、多くのくも膜下出血は外部の衝撃によってではなく、脳の中の血管がこぶ状に膨らんで出血しやすくなっている「脳動脈瘤」が突然破裂することで引き起こされます。こちらのタイプのくも膜下出血は再発しやすく、10年後の再発率は80%にもなるといわれています。
ハヤブサ選手が優華選手のように外傷性くも膜下出血、またはその再発だったとは考えにくいでしょう。おそらくハヤブサ選手は、2001年の頸椎損傷とは直接関係のない、脳動脈瘤という別の疾患を抱えており、これがある日突然破裂して死に至ったものと思われます。試合中の衝撃的な事故、そして今回の衝撃的な死。ともに頭頸部にかかわることから関連があるような印象を持たれるかも知れませんが、2つの疾患は分けて考える必要がありそうですね。
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