麻央 空白期間の謎 がんを放置して良いとき、悪いとき

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小林麻央 空白期間にがんを放置した可能性は?

小林麻央さんは現在ステージ4の乳がん。乳腺や脇のリンパ節以外にもがんが転移した遠隔転移を伴う状態であり、一般的には治癒は難しいとされています。

なぜ、このような状態になってしまったのか?

ベルーガクリニックHPは、標準治療ではなく非標準治療を選択したことが原因と見ているようです。この説には説得力があるように思います。ただ、別の可能性も見ておきましょう。

命に関わる乳がんと比較したらお叱りを受けるかもしれませんが、歯が痛いとき、歯医者に行かなければならないことは分かっていても行きたくないことってありますよね。歯医者に行けば痛みは無くなるでしょうし、放置してこれ以上悪くなるのも防げます。

しかし、治療自体に恐怖心を感じますし、それに加えて、「こんなに痛いのだから相当悪いのかな……抜歯もあるかも」「何でこんなになるまで放置したの! と言われないかな」という不安も。行かなければ、行かなければと思ってはいても、なかなか歯医者に行けない。そういうことってありますよね。そしてそんなとき、「歯を破壊しているのは歯医者の治療だ。放置が一番!」と主張する人がいれば、これ幸いとすがりつきたくなります。その心理をとがめることはできないでしょう。

花咲き乳がんは、自覚していても受診できないケースがある

乳がんが皮膚を突き破って露出する皮膚浸潤、皮膚転移のことを「花咲き乳がん」というのだそうです。一説によると小林麻央さんの入院の動機がそれではないかとも言われています。

乳がんの皮膚転移について気になる報告がありました(参照:臨床に役立つ(といいな!)乳がん皮膚転移の話)。

初診の時点で皮膚転移を伴うのは全体の5%程度だそうですが、問題はそこまで悪化してしまった原因。次のように記されていました。

本人はしこりの時点で気付いていることが多いが、診断されることが怖くそのまま自宅で隠し持っている。

病院に行かなければならないことは分かっているのに、診断が怖くて行けない。その心理はよくわかります。自分の胸が「花咲き乳がん」と呼ばれる状態になれば、相当まずい状況なのは察しがつきます。しかし、たとえ相手が医師でも、そんな状態を他人に見られたくない……。

花咲き乳がんはそれ自体が放置の原因になります。これを愚かというのはたやすいかもしれませんが、人間はそんなに強くないし、責めることはできないと思います。
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近藤誠医師のがん放置療法の誘惑

ここからは想像です。もし、自分の胸がただ事ではないことを自覚し、でも病院にはどうしても行けない。そんなとき、誰かが「がん治療は放置が正解!」と言ってくれたらどれだけ心強いことか。

近藤誠医師の「がん放置療法」はとても有名なので、ここでは内容に立ち入ることはしませんが、その名の通り、がんを積極的に治療しないという立場。治療初期の流れはおおよそ次の通りです。

・がんが発見されただけでは早期がんでも転移がんでも治療を始めない。
・がんを放置する場合は、早期がんは6カ月に1回、進行がんは3カ月に1回の間隔で診察する。
・経過観察の途中でがんの増大や苦痛が見られたら、その時点から治療方針や治療方法を検討する。

小林麻央さんは2016年春の段階で、「とても手術ができる状態ではなかった」とされています。このときには、既にがんが増大し苦痛が生じていたと考えられます。通常であれば治療のスタートが遅れた深刻な状態と受け止めるところですが、がん放置療法の立場に立てばこの時点からの治療開始でよいことになります。

腫瘍内科医の勝俣範之医師はブログの中で「がん放置療法は人体実験」であると批判しています。そして、世界中のガイドラインに照らして考えるなら、がんの放置が選択されるのは次のケースだといいます。

・治癒が難しく、延命やQOL(生活の質)重視でがんと共存する方針のとき
・心臓、肺、腎臓(人工透析)に問題があり積極的な治療を避ける理由があるとき
・進行の遅い前立腺がん※で経過観察(PSA監視療法)を行うとき
(※前立腺がんでは血中の指標であるPSAの増大を確認してから手術をしても予後が変わらないとされる)
このように、がんを放置して良いケースというのは本来は限定的なものです。

また、勝俣医師は気になる実例を挙げていました。

乳がんのステージ3の患者さんが放置療法を選択し、抗がん剤も手術も放射線も行わずに6カ月後に骨と全身に転移し、この時点から放射線治療を試みたものの亡くなってしまったそうです。標準治療をしていれば、確実に治ったとまではいえないものの、ステージ3の段階で適切に治療をすれば40~50%は治癒する可能性があったとしています。

ステージ3からのスタート。そして、(何らかの理由によって)標準治療を行わなかったことによる骨と他臓器への転移……。小林麻央さんのケースと少し似ているという印象を持ちました。

小林麻央さんの乳がんが進行した要因は非標準治療のためとも言われていますが、ここでは別の可能性に目を向けました。
皮膚転移を伴う乳がんで放置してしまう人が実際に少なくないこと、そして、がん放置療法を選択した人の中には類似の事例も見られたこと。以上から、単に「放置」という可能性もあり得るように思えたのです。

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