12月13日は「ビタミンの日」です。この記念日の制定には「脚気」(かっけ)という病気が関係しています。脚気はその昔「江戸患い」「亡国病」と呼ばれ、大正時代頃まで日本人を悩ませる国民病でした。ビタミンB1不足が原因で、つま先が針で刺されたようにチクチクと痛み、焼けるような感覚が生じるといいます。江戸時代に贅沢品とされていた精製された白米を食べる習慣が庶民に広がったことで、脚気も増えていきました。帝国海軍の検証によって、脚気の発症が、ビタミンB1を含まない白米食に起因していることが判明したのはよく知られたエピソードですよね。
1910年12月13日、鈴木梅太郎博士は脚気を予防する、米糠から抽出した成分を「オリザニン」と命名し、東京化学会で発表しました。オリザニンは後に発見されるビタミンB1と同じものです。鈴木博士がオリザニン(=ビタミンB1)について発表した日にちなんで、12月13日が「ビタミンの日」に制定されました。
さて、ビタミンの日と関わりの深い「脚気」には過去の病気のようなイメージがありますが、現在でも発症することがあるのをご存知でしょうか。
偏った食生活で「脚気」になる
炭水化物、タンパク質、脂質といった主要なエネルギー源と区別して、ビタミンやミネラルのことを微量栄養素と呼びます。ビタミンB1も微量栄養素のひとつで、玄米、胚芽精米、豚肉、ウナギ、大豆などに含まれています。
江戸時代や戦前・戦中とは異なり、現在では国民の栄養状態も向上しており、普通の生活をしていれば脚気になることは稀です。しかし、スナック菓子やカップ麺ばかり食べていると、必要なカロリーは確保できても、微量栄養素が不足しがちです。現在でも、不規則な食生活を続けている人はビタミンB1が不足し、脚気になる可能性があります。
また、アルコールを分解する際にビタミンB1が消費されるので、偏った食事をし、なおかつ飲酒の習慣がある人は脚気のリスクが高いといえるでしょう。
脚気で怖いのは心不全
脚気は、文字通り「脚」に症状が出る病気ではあります。脚が痛くなるのは末梢神経が障害されるからです。それと同時に、心臓の機能も障害されます。
心臓の機能が低下すると、これを補うために心拍数が増加します。しかし、このように心臓に負担をかける状態は長くは続けられません。やがて心臓は疲弊し、高い心拍数を維持できなくなって心不全に至ります。重症化した心不全の治癒を期待できる治療法は心臓移植しかありません。
脚気は過去の病気でもなければ、脚だけの病気でもありません。現在でも深刻な状況を引き起こす可能性のある怖い病気です。「ビタミンの日」をきっかけに、あらためて毎日の食生活について考えることができたらいいですね。
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