「手術によって視力を回復できる」「眼鏡なしで生活できる」とされるレーシック手術の後遺症が話題になっています。東京・港区の「品川近視クリニック」と「錦糸眼科」に対して損害賠償を求めている裁判で、10月30日、新たに9人の患者が集団提訴しました。レーシックにはどのような問題があるのでしょうか。
エキシマレーザーで角膜を削る手術
レーシックとは、エキシマレーザーと呼ばれる機器を用いて、眼の表面にある「角膜」を削る手術です。角膜を削る角度、形状はコンピュータで計算され、角膜を削る工程も自動化が進んでいます。手元が狂ったとか、設計していたのと違った、といったケアレスミスは生じにくい手術といえます。
医療の分野で損害賠償が求められるのは医療ミスが発生したケースが多いと思いますが、レーシックに関しては必ずしも医療ミスが問題ではないように思われます。角膜を削るということ、そして、削った角膜は元には戻らないということ、さらに、削った後どうなるかは完全には予測できないこと、これらは正しく行われたレーシック手術にもついて当てはまります。
レーシック手術のリスク
レーシック手術には、仮に医療ミスがなかったとしても、次のようなリスクが指摘されています。
・夜間の視力が低下する
・角膜が濁り、かえって視力が低下する
・緑内障や白内障といった、他の眼下疾患の検査・治療の精度が下がる
・ドライアイになる
デメリットの説明不足が問題か?
原告の男性の1人は、「リスクを説明しないで、明日から働けるみたいな感じでやってしまう」と述べています。医療機関には科学的根拠に基づいた説明責任があります。しかし一方で、現在の医療現場では生き残りをかけたPR合戦が行われているのも事実です。ひと昔前とは異なり、広告手法も高度化しています。医療機関のホームページや広告には、やってみたくなるような宣伝文句がおどっています。
しかし、手術を受ける側が知っておかなくてはならないのは、医療に絶対はないこと、まして「手軽」というものはない、ということです。その他の商品やサービスを選択するときと同じように、「確かにメリットもあるけれど、デメリットはないのか?」という視点を持ち、自分でもよく調べることが大切です。もちろん、説明不足の医療機関はとがめられるべきですが、一方で私たちの側でも「医療だから安心なはずだ」ではなく、「医療だからこそ慎重に検討すべきだ」という意識を持つことが必要なのかもしれません。