宮城県の60代主婦が医療ミスによって両手足の指20本が壊死したとして損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こしました。壊死に至ったのは「壊死性筋膜炎」によるものと考えられますが、当初受診した整形外科クリニックでは経過観察の処置がとられていたといいます。
壊死性筋膜炎はどこにでもいる菌によって引き起こされます。通常、重症化することは稀です。しかし、免疫力が下がっているときに、ケガや火傷、虫刺されなどで皮膚に傷ができると、重症化して皮膚や筋肉が壊死してしまうことがあります。
壊死性筋膜炎の原因は「人食いバクテリア」?
壊死性筋膜炎を引き起こす菌はいくつもありますが、中でも多いのが「溶連菌」という菌です。溶連菌は皮膚の常在菌でどこにでもいるありふれた菌。人の皮膚に住み着き、通常は病気を引き起こすことはありません。
筋膜とは筋肉を覆う薄い膜のような組織です。筋膜に溶連菌が入って重症化すると細胞を壊死させてしまいます。真っ黒に変色した壊死した部分が、あたかもバクテリアに食べられた跡のような印象を与えることから、英語圏ではflesh-eatingというそうです。普段は悪さをしない溶連菌ですが、条件次第で「人食いバクテリア」に変わってしまうのです。
壊死性筋膜炎が生じやすい条件とは?
壊死性筋膜炎は免疫力が低下しているときに生じやすい病気です。要因としては次のようなケースが考えられます。
・がん、糖尿病、慢性腎臓病、肝硬変などの病気で免疫力が下がっている
・治療のために「免疫抑制薬」を服用している
・妊娠中、または出産直後である
・インフルエンザなどのウイルスに感染している
こうした条件に当てはまる人は、皮膚に傷ができたときに用心する必要があります。傷口を流水でしっかり洗い、治るまでプールや温泉といった菌のいる可能性の高い場所を避けましょう。強い痛みや高熱、患部の変色がみられるときは医療機関を受診することをお勧めします。