小林麻央 体の傷について語る
小林麻央さんが「身体に大きな傷ができた」と語ったのは10月19日付けのブログでのこと。
肉体は「魂」を守るためのもので肉体に変化が起きても魂は変わらないとし、
傷ができても不思議と悲しくはならなかったといいます。その一方で魂を守る頭、目、鼻、口、手、足といったすべての部位が愛おしく思え、大切にしたいという気持ちが強くなったとも述べています。
ここで語られている体の傷とは、小林麻央さんが9月中に行った局所コントロールと呼ばれる手術の傷跡のこと。
ストレートに言ってしまうと乳房の傷跡だと思われます。
小林麻央さんにとって手術は待ち望んだものでした。決して嫌々行ったものではありません。ステージ4でありながら根治を目指す第一歩となるもの。こうした事情も手伝って、傷跡についてそこまで悲観的にはならないのかもしれません。
小林麻央 「大きな傷」は温存? 全摘?
乳がんの手術では乳房温存手術と全摘手術があることは良く知られています。小林麻央さんが行ったのはどちらだったのかという問題があります。
まず、温存手術はステージ2以下で一般的には3cmよりも小さな腫瘍に対し、患者が温存を希望する場合にのみ行われるものです。ステージ2であれば温存の可能性もあれば全摘の可能性もあります。しかし、ステージ3となると、乳房温存手術の適応から外れるので全摘手術が行われます。
さて、小林麻央さんはステージ4です。実のところステージ4はどの手術適応からも外れているので手術を行うこと自体が稀で、明確な基準はありません。しかし、ステージ4になって温存手術を行うとは考えにくいでしょう。温存手術の再発率は術後に放射線治療を追加するという前提で、全摘手術と同等となります。切除のみを行った場合は全摘手術の方が予後は良くなります。
乳房温存手術の目的はがんを治す根治性と、見た目に配慮した整容性の2つがあります。小林麻央さんは生命に関わる段階にあり、整容性にこだわるとは考えにくいでしょう。
また、ステージ4は通常根治を期待できないとされていますが、小林麻央さんはそれでも根治を目指すことを表明しました。この点からも、根治(に準ずる)手術である全摘手術を選択すると考えるのが妥当でしょう。
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全摘手術の中にも種類がある
乳がんの手術は温存手術か全摘手術かという問われ方をしがちですが、全摘手術のなかにもいくつもの段階があります。
文字通りすべて切除するものを乳房切除術、皮膚はできるだけ残すが乳頭を含む乳腺を全て切除するものを皮下乳腺切除術、乳輪と乳頭を温存するものを乳輪乳頭温存乳房切除術といいます。
同じ全摘手術の中でも、乳房切除術よりも皮下乳腺切除術、皮下乳腺切除術よりも乳輪乳頭温存乳房切除術の方が温存の割合が高くなり、このことは同時に再発率が高くなることを意味しています。
乳がんプラザHPによれば、皮下乳腺切除術に関しては安全性が保障されているものの、乳輪乳頭温存乳房切除術に関しては「根拠は十分ではないが、細心の注意のもとで行うことを考慮しても良い」とされているそうです。
全摘手術の範疇であっても、乳輪乳頭を温存した場合は乳腺の10~15%が取り残されるものと思われます。そして、この残った乳腺に対しては、温存手術の場合のように放射線治療が必須とされているわけではありません。そのため、再発リスクのある乳腺の一部が放射線治療の追加なしでそのまま残っている状況となり、乳輪乳頭を温存しない全摘手術に比べて再発率が上がると推測されます。
以上を踏まえ、根治を最優先した手術を行う場合、皮膚の温存まではあっても乳輪乳頭の温存はないと考えられるのではないでしょうか。
小林麻央さんはそもそも手術適応のないステージ4。そのためどのような手術が行われたのかは推測しにくい面があります。とはいえ、ステージ2以下に対する温存手術を行ったとは考えにくく、ステージ3に対して行うような全摘手術に準ずる手術を行ったと考える方が自然でしょう。そして、小林麻央さんが一般的には非常に難しいとされるステージ4での根治を宣言していることを考慮するなら、再発率に不安の残る輪乳頭温存にこだわったとは考えにくいでしょう。
以上から、小林麻央さんが語る大きな傷とは、乳輪乳頭を温存しない全摘手術のように思われます。ただし、小林麻央さんの場合、本来なら手術すること自体が難しいケースを医師の英断で行っているので、仮に全摘手術に準ずる手術を行ったとしても、それをどこまでやり切れたのかという別の問題は残っています。