10月に亡くなられた声優の松来未祐さんの死因は「悪性リンパ腫」。がんの一種ですが、通常の固形がんとは異なり、「血液のがん」です。松来未祐さんが亡くなられたことが報道されたとき、憶測の域を出ないものではありましたが、「白血病ではないか」ともいわれていましたね。実際には悪性リンパ腫で、白血病とは異なっていますが、血液のがんという点は共通しています。ここでは、悪性リンパ腫という血液のがんについて見てみましょう。
腫瘍が血液中を循環する「血液のがん」
肺がん、肝がん、大腸がん、などのがんは腫瘍を作る固形がんです。腫瘍が大きくなって周囲の組織の中に浸潤し、他の臓器に転移するという形で進行します。一方、白血病や悪性リンパ腫は腫瘍を作らない血液のがんです。悪性リンパ腫は「しこり」を作りますが、細胞の結びつきは非常に弱く、腫瘍はあくまでも血液中を循環しています。
多くのがんでは外科手術による腫瘍の切除が第一選択となりますが、血液のがんでは、血液中を循環している腫瘍を減らすために抗がん剤治療が中心になります。
悪性リンパ腫の症状
悪性リンパ腫になると、首、わきの下、足の付け根などのリンパ節が腫れ、発熱などの症状が出ます。リンパ節は風邪をひいたときにも腫れるので、これが腫瘍を原因とするものかどうかを確かめるために「生検」を行います。生検は、腫れているリンパ節の組織を採取し、顕微鏡を使って病理診断を行う検査です。
悪性リンパ腫のステージ
固形がんの進行具合を示すステージは、腫瘍の大きさや数、どの程度深く浸潤しているか、転移はあるか、などによって判断されます。これに対し、悪性リンパ腫のステージの判断は少し特殊です。
体の中心部分には、呼吸の際に肺を広げる働きをする横隔膜があります。この横隔膜より上の胸側、または横隔膜より下のお腹側のいずれか一方のみに病気がある場合を限局期(1期、2期)といいます。胸側、お腹側の両方に病気が広がっている場合を進行期(3期、4期)といいます。限局期では抗がん剤治療の後に放射線治療を行うのが一般的です。進行期では、より強力な抗がん剤治療を行います。
悪性リンパ腫は種類が多いので予後については一概にはいえませんが、1期、2期の5年生存率は8~9割となっており、治癒を期待できる病気といえます。ただし、松来さんの場合は慢性活動性EBウイルス感染症という病気を原因としていたため、事情は少し異なっていました。EBウイルスについては「松来未祐さんの死因明らかに…EBウイルスが危険なとき、危険でないとき」でふれています。
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