39度台の熱が毎日出ていたのが
一昨日あたりから38度台のみになり、
今日は37度台に安定していました。
とあります。
この1日前には、子どもたちとの退院日の約束を守れなかったことを綴っていますが、翌29日にはブログを2回更新し、1回目が家族からの差し入れの話題、そして2回目が熱が下がってきたことの報告でした。
小林麻央さんが再度の入院を報告したのは2017年4月22日のこと。乳がんで闘病生活を送る麻央さんにはこれまでも危機的と思える状況が何度も訪れています。そんななかで今回は特に心配だと思える理由に更新頻度の低さがありました。入院、そして輸血の報告の後、しばらくの間近況が分かりませんでした。そして、28日、29日とブログの更新頻度が高くなり、最後の2つはポジティブな内容となっています。退院時期か近づいていることを示しているように思います※
さて、熱が下がり、退院時期が近づいているのは喜ばしいことですが、気になることがあります。
それは、今は回復しているとはいえ、高熱が何日も続いていたこと。麻央さんの乳がんは転移を伴うステージ4ですから、単に発熱したといっても普通の発熱とは違うのかもしれません。ここでは癌特有の発熱について見てみましょう。
※麻央さんは5月5日の夜にも再度発熱し、39.6℃であったことが報告されています。当初予定されていた短期間の入院とはならず、また、子ども達とかわした退院日の約束についてはその後語られなくなりました。病状が変化し、それを踏まえた本人の意識の変化が見て取れます。4月末段階では問題を一つひとつ「クリア」と表現されていたのが、5月6日になると「回復するまで粘って、粘ります」と表現されています。「クリア」と「粘る」とでは、病気に対する態度が異なります。「粘る」の方が病状をより重く見ており、容易には解決できないという認識が含まれています。健康ノートでは、麻央さんがブログ更新を中断していた5月初頭に認識の転換が起きたととらえ、「儀式化した食事」というテーマで考察しています。
※さらに5月11日には40℃を示す体温計の画像が掲載されました。麻央さんの高熱は一時的なものではなく、上がったり下がったりを繰り返しているようです。そのような状態にもかかわらず、「仕上げに、冷たいタオルを頭に乗せると鎮まる熱気に、はぁーと思わず気持ちいい声がでてしまいます」と、高熱には似つかわしくないコメントを残しています。40℃近くの熱が続いていれば意識も朦朧としてきそうなものですが、麻央さんはブログを精力的に更新し続けています。下記でもふれますが、高熱が続くこの危機的状況と、それに対して余裕があるとも受け取れる振る舞いのギャップが、やはり普通の高熱とは違うのではないかという疑問を抱かせるのです。
※退院後の6月4日にも39.4℃の熱で汗の量がすごいと報告。退院はしたものの熱の問題はまだ継続中であることが分かります。
がん患者の発熱原因には感染と腫瘍熱がある
まず、発熱は癌の人にも癌でない人にも起きます。癌でない人の発熱原因は主に感染症です。この点は癌患者も同様で、もっとも頻度の高い発熱原因は感染症となっています。
腫瘍熱とは、癌患者における感染症または薬剤性の発熱ではないことが確認された発熱のことで次のような特徴があります。
腫瘍熱が生じる条件
・腫瘍が大きい
・転移がある
・腫瘍が他臓器に浸潤している
・腫瘍の壊死を伴う
腫瘍熱の症状の傾向
・症状をもとに感染症と区別するのは難しい
・感染症の場合に比べ悪寒や戦慄を伴わないことが多い
・自覚症状が軽く、患者が発熱に気づかないこともある
腫瘍熱の診断基準
・1日1回37.8度以上の熱が出る
・2週間以上続く
・感染が否定されている
・薬剤熱や輸血による反応が否定されている
・適切な抗菌薬を7日以上使用しても改善しない
・ナプロキセンにより解熱している
(Changらの定義)
腫瘍熱にはナプロキセンが効く
このように腫瘍熱とは高熱が2週間以上続くが感染を原因としていない発熱です。感染が原因ではないので抗菌剤では改善しません。しかし、効果的とされている薬があります。
それはナプロキセン(ナイキサン)です。市販薬ではロキソニンがこの仲間にあたります。
腫瘍熱が生じるプロセスは、腫瘍そのものまたは免疫による腫瘍の攻撃によって発熱性サイトカインが作られ、これが床下部近傍の血管網の内皮細胞に達すると発熱とかかわるプロスタグランジンという物質が作られて体温調整中枢に作用するためと考えられます。
ナプロキセン(ナイキサン)には、プロスタグランジンが作られるときに使われるシクロオキシゲナーゼという酵素を阻害する働きがあります。発熱性サイトカインが作られても、プロスタグランジンが作られなければ発熱は抑制されます。
麻央の状況変化 局所的問題から全身状態へ
麻央さんの発熱は腫瘍熱だったのでしょうか。結論としては、癌患者においては感染を原因とする発熱も多いため、腫瘍熱であると断定することはできません。ただ、これまで麻央さんは高熱にともなう苦痛にふれていないので、高熱は出ていても症状をあまり感じていなかった可能性はあります。だとすると、腫瘍熱の特徴と一致します。そして、体温は既に安定しているとのことなので、もし腫瘍熱だったとするなら、この解熱はナプロキセン(ナイキサン)の効果によるものと推測されます。
退院の時期が近づいた今、あらためて今回の入院の性格を考えてみましょう。1つ前の入院、つまり2016年年末からの入院は強い痛みが原因。それは骨転移による背中を中心とする激しい痛みでした。一方、短期間であることがあらかじめ予告されていた今回の入院については、痛みや息切れも伴ってはいたものの、注目すべき点が他にあります。末期がん特有の病態がそれにあたります。すでにブログで報告されているものには輸血による治療とセットで語られた「炎症」がありました。そして今回の「発熱」です。炎症にしても発熱にしても、特定の部位や臓器にトラブルをかかえた局所的な問題ではなく、全身状態に関わるものです。
前回の入院と今回の入院を比較すると、局所的問題から全身状態へと課題が移行しているように思えます。麻央さんの乳がんはステージ4であり、報告されているだけでも骨と肺に遠隔転移していますが、身体の腫瘍が増えるまたは大きくなるといった変化が起きているとが予測されます。炎症、そして発熱(それが腫瘍熱であるならば)はいずれも身体内の腫瘍のボリュームと関わるものだからです。