2005年、株式会社クボタ神崎工場(大阪府)の従業員と周辺住民の多くが「中皮腫」を発症していることが報じられ、アスベストの危険性が広く知られるようになりました。欧米諸国の例をみると、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデンにおける中皮腫の発症は90年代をピークに減少に転じています。一方、日本では80年代前半で年間100人程度だったのが、95年には500人、2004年には953人と増加傾向にあります。日本における中皮腫は、今後増加することが予想されています。
2020年までに中皮腫の発症が増える可能性
中皮腫の潜伏期間は少なくとも15年、長い場合は60年といわれています。日本は80年代に経済成長がピークを迎え、建設ラッシュの中で大量のアスベストが使われました。中皮腫の潜伏期間を仮に40年と仮定すると、2020年頃にかけて罹患者が増えていくことが予想されます。
日本のアスベスト輸入量を見ると74年にピークを迎えていることがわかります。実はその後も使われ続けており、86年~91年の平成景気でも増加を確認できます。平成景気の頃のアスベストまで考慮するなら、2020年以降も健康被害が続く可能性があります。
低濃度ばく露にも危険が伴う
大量にアスベストを吸い込むほど健康被害のリスクは高くなります。しかし、少なければリスクがないかというと、そうではありません。石綿などの有害物質にさらされることを「ばく露」といい、大量に吸い込むことを「高濃度ばく露」といいます。肺がんや石綿肺といった病気は、主に高濃度ばく露によって発症します。これに対して、中皮腫は高濃度ばく露だけでなく、低濃度ばく露によっても発症することが知られています。中皮腫には労災保険や石綿健康被害救済制度といった支援制度があります。中皮腫と診断されたときは主治医やケースワーカーに適用される支援制度についても確認することが大切です。
食道がんは「お酒で顔が赤くなる」ヘビースモーカーがハイリスク!?
間違いやすい「咽頭がん」と「喉頭がん」―声を失うリスクが高いのはどっち?