心筋梗塞で亡くなられたアーティスト・今井洋介さんは一時期、体重100キロを超えていたこともあるそうです。今井さんはもともと痩せており、テレビで見る姿もスマートでしたね。ということは、急激な増量(理由はラーメンだそうですが)と急激な減量を経験されていたことになります。このあたりの事情については今井さんが自身のプログ「今井洋介体重100kgストーリー」(http://ameblo.jp/imai-yosuke/entry-11906933080.html)の中で詳しく語られています。
健康診断を受けたことのある人はご存知かと思いますが、問診票には「成人してから10キロ以上体重が変化しているか」を問う項目がありますよね。これは、体重の増減幅が大きいと病気になったり、死亡したりするリスクが高くなることから、このような質問をしているわけです。おそらく今井さんは30キロ近い体重の増減を経験されていたでしょう。ここでは、体重の増減と死亡リスクの関係について見てみましょう。
体重の増減と死亡リスクに関する調査
International Journal of Obesity誌に発表された、津金昌一郎氏らによる厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC)」は、40~69歳の男女8万人を約9年間追跡し、生活習慣病や死亡率について調査しています。
体重変化の幅が小さい(2.4キロ以内)グループを「1.0」とした場合、次の各グループでリスクがどのように変わるのかを調べています。
1)2.5~4.9キロ増加
2)2.5~4.9キロ減少
3)5キロ以上増加
4)5キロ以上減少
体重の減少・増加ともにハイリスクとなり、とくに減少が危険
男性と女性における体重変化と総死亡リスクの関係は次のとおりです。
≪男性の体重変化と総死亡リスクの関係≫
1)2.5~4.9キロ増加 1.13
2)2.5~4.9キロ減少 1.25
3)5キロ以上増加 1.29
4)5キロ以上減少 1.43
このように、体重は増えた場合も減った場合もリスクが上昇していますが、増えた場合に比べて、減った場合の方がよりハイリスクになっていることが分かります。
≪女性の体重変化と総死亡リスクの関係≫
1)2.5~4.9キロ増加 1.33
2)2.5~4.9キロ減少 1.19
3)5キロ以上増加 1.31
4)5キロ以上減少 1.70
女性に関しては、5キロ以上減少した場合のリスクが突出しています。一方、2.5~4.9キロの範囲内での体重変化においては、男性の場合とは異なり、体重が増えた場合にリスクが高くなっていることが分かります。
BMIよりも、体重の変化の方が重要なファクターになる
健康診断ではBMIによって、太っているか、痩せているを判定しますよね。しかし、この研究によれば、BMIを問わず、体重の変化が大きいほどリスクが高くなるとしています。
これはどういうことかというと、BMIが「太り過ぎ」という人でも、その体重のまま変化がなければリスクが小さいということです。反対にBMIが「標準」という人でも、体重変化の幅が大きければハイリスクとなります。
私たちはとかく「痩せていると健康的」「太っていると不健康」と考えがちですが、死亡リスクを決定するのは痩せているか、太っているかではなく、どの程度体重が変化しているかだったのです。さらに、ここで注意すべきなのは、通常、健康意識の高い人が行っている減量が、ひょっとすると増量以上に危険である可能性があるという点です。今井さんの場合は体重の増減幅が非常に大きくなっていました。そのことが原因とはいえませんが、統計で見る限りハイリスクであったと考えられるのではないでしょうか。
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