梅原やすよさんは姉妹漫才コンビ「海原やすよ ともこ」の妹の方で現在41歳。やすよさんは検査で脳動脈瘤が見つかったため近々クリッピング手術という方法で手術を行います。脳動脈瘤で話題となった有名人としてはタレントの川村ひかるさんや、元おニャン子クラブの新田恵利さんが思い浮かびます。ここで注目したいのは、川村ひかるさん、新田恵利さん、梅原やすよさんは同じように脳動脈瘤が見つかっていながら、その後のアプローチが少しずつ異なっている点です。
川村ひかるさんは脳動脈瘤が見つかりましたが手術は行わず、その後、帝王切開で無事出産を終えています。
新田恵利さんはしばらくの間、手術を行わずに経過観察をしていましたが、最終的には手術を選択しました。
そして、この中で梅原やすよさんは最も手術の緊急性が高かったと推測され、しかもクリッピング手術という大がかりな治療を選択しています。なぜなのかを考えてみましょう。
クモ膜下出血を避ける経過観察と手術
脳動脈瘤とは、脳内の血管の一部が瘤状に突出したもので、破裂すると命にかかわるクモ膜下出血を引き起こします。脳動脈瘤が破裂する確率は大きさや形によって異なり、脳動脈瘤全体では1年後の破裂の可能性は1%程度とされています。
1%ですから、確率としてはかなり低いといえます。しかし、ひとたび破裂すれば命にかかわるので軽視はできません。そして、脳動脈瘤は手術自体に一定のリスクを伴い、心理的にも脳の手術は受け入れがたいことも多く、治療の選択には熟慮を要します。
中には、少しでも破裂の可能性があるなら手術で不安を解消したいという人もいるかもしれませんが、一般的には、破裂の危険性が少なければ経過観察を選択するのではないでしょうか。川島ひかるさんは経過観察を続け、その後も問題なく生活を続け、第一子の出産にも成功しています。
では、経過観察ではなく、手術を選択するのはどのような場合でしょうか。ひとつは経過観察を続けている内に異変に気づく場合。例えば新田恵利さんはこのケースだったようです。脳動脈瘤が破裂する可能性は大きさ、そして形によって左右されます。新田さんの脳動脈瘤は破裂の可能性が高いとされるハート型だったそうです。このように、手術が必要となる兆候にいち早く気づくことは経過観察の大切な目的です。
脳動脈瘤でクリッピング術を選択する理由
日本脳ドック学会は、
・70歳以下である
・動脈瘤の最大径が5mm以上である
・外科的治療の妨げになる条件がない
このような場合に手術を勧めるとしています。
梅原やすよさんの場合、まず70歳以下であり、また手術の妨げるような健康上の問題がなかったのでしょう。そして、はっきりとしたことは分かりませんが、脳動脈瘤は5mm以上だったのではないでしょうか。このことは、やすよさんが頭痛の症状を訴えていたことからも推測できます。脳動脈瘤は症状を伴わないまま脳検査で偶然見つかることも多いそうです。症状があるということは、脳動脈瘤が周囲を圧迫するほどに大きくなっていた可能性が高いのです。
やすよさんが選択したクリッピング術は頭蓋骨を開いて手術する方法です。治療に伴うダメージを侵襲(しんしゅう)といいますが、クリッピング術は侵襲の大きな治療にあたり、入院期間も2週間ほど必要です。なお、新田恵利さんは手術後ただちに仕事を再開していることから、おそらく開頭手術のクリッピング術ではなく、血管内にカテーテルを入れて治療するコイル塞栓術だったとおもわれます。
クリッピング術もコイル塞栓術も、ともに治療のリスクがある点は同じですが、心理的には開頭しない分、コイル塞栓術の方が抵抗感が少ないのではないでしょうか。クリッピング術を選ぶのには理由があるはずです。
クリッピング術には次のような利点あります。
・脳動脈瘤をしっかりクリップでき、治療の確実性が高いとされる
・再治療の可能性がコイル塞栓術よりも低い
・治療中の出血などの不測の事態に対する対応力が高い
これは憶測ではありますが、やすよさんは既に症状も出ており、川村ひかるさんや新田恵利さんと比べて破裂のリスクが高く、クリッピング術を第一選択とすることに迷いがなかったのかもしれません。クリッピング術は重い合併症の確率が5~10%程度とされ、重大な選択です。ただ、重い合併症の確率はコイル塞栓術も同等であり、予後で比べるならクリッピング術の方が治療の歴史も長く、信頼性が高いとされています。この選択が良い結果につながることを願いましょう。