12月6日、沖縄を代表する女優・平良とみさんが敗血症による呼吸器不全のため亡くなられました。平良さんは87歳でした。敗血症は高齢者の疾患ともいわれており、亡くなられる人も大勢います。敗血症がどのような経過をたどって死に至るかについては、いく通りもの筋道が考えられますが、ここでは高齢者に多い代表的なケースとして「日和見感染」というものについて見てみたいと思います。
敗血症が「高齢者の疾患」と呼ばれる理由
敗血症で亡くなる人の約80%は65歳以上だそうです。65歳未満の成人が敗血症にかかった場合の3か月後の生存率は約90%であるのに対して、65歳以上では59%にとどまっており、敗血症は高齢者の疾患とも呼ばれています。
敗血症が重症化する理由は「免疫の老化」!?
敗血症は、体のどこかにできた傷口の細菌が、血管を通じて全身に波及してしまう病気です。免疫力が低下している場合、ほんの些細な傷が敗血症を引き起こすことがあります。体中の血管に細菌が入り込むと、直後に大きな炎症反応が生じます。以前は、この炎症反応が直接の死因になると考えられていましたが、現在では、とりわけ高齢者においては、炎症が起きた後の体の反応が主な原因ではないかと考えられています。
炎症の後に起きる体の反応とは「免疫抑制」のこと。つまり、本来、血液の中に入った細菌やウイルスを攻撃する免疫が働かない状態です。免疫も老化によって働きが悪くなります。また、高齢の人が敗血症にかかったとき、免疫抑制が原因で死に至るケースが多いそうです。
免疫が低下したときに起きる「日和見感染」とは?
免疫力が低下すると、普段、私たちの周囲にあり、特に悪さをするわけでもない細菌が猛威をふるうようになります。例えば、結核菌、真菌、ヘルペスウイルスなどです。日和見感染が起きると、血圧が急激に下がったり、肝臓や腎臓の機能が著しく低下したりします。複数の臓器が機能しなくなる多臓器不全に陥ることもあります。
本来毒性の弱い菌によって死に至るケースは、例えば、免疫機能が失われるエイズに典型的に見られるものです(【チャーリー・シーン騒動】HIV感染は、エイズ発症前に治療すれば日常生活に支障はない?)。しかし、エイズだけではなく、癌によって免疫力が低下している人、高齢の人、敗血症で「免疫抑制」となった人などにも同様の危険があります。日本人の死因として多いのは、癌、心疾患、肺炎、脳卒中であることが知られていますが、中にはこのような大きな病気そのものによってではなく、その治療中に日和見感染が起きたことで亡くなってしまうケースもあるそうです。今後、高齢化が進むにつれて日和見感染はますます大きな問題になると予想されます。この分野における医療の進歩に期待が寄せられています。
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