脳梗塞で休養中だった徳永英明さんがツアーを再開しました。徳永さんの脳梗塞の「もやもや病」というタイプです。徳永さんは2001年5月から2002年11月まで活動を休止していました。しかし、その後手術を受けています。
今回の一時的な活動休止は2000年代初頭の長期的な活動休止とは性質が異なると思われます。ここでは徳永さんのもやもや病とはどのような病気なのか。そして、手術によって何が変わったのかについて見てみましょう。
もやもや病の手術とは
徳永さんは2016年2月22日に手術を行っています。「もやもや」という語感からは病気の深刻さが伝わりにくいのですが、もやもや病は脳の血管にかかわる病気で、徳永さんの場合、頭蓋骨を開いて行う開頭手術が約6時間にわたって行われたといいます。美しい歌声を持つ徳永さんだけに、この病気が歌うことに影響を与えないかどうかが気になるところです。
熱唱にリスクが伴う可能性
息を全力で吐き切ると、誰でも頭がくらくらすると思います。このとき、脳への酸素供給は少なからず低下しています。もやもや病の場合、こうした症状がより深刻になると考えられます。
もやもや病では首を通って脳へと血流を送る内頚動脈が、脳の入り口付近で狭くなって血流が途絶えがちになります。ただでさえ脳の血流が不足しがちなため、大きく息を吐き出すような行動によって言語障害や意識障害を引き起こすことがあります。
行わない方が良い行動としては次のようなものが挙げられます。
・吹奏楽器を演奏する
・ラーメンなどの熱い食べものをフーフーと息を吹きかけてさまそうとする
・大泣きする
・大きく深呼吸する
いずれも大きな呼吸を伴った行動です。また、徳永さんのような本格的な歌唱は呼吸を最大限に活用するでしょうから、熱唱した場合にはある程度のリスクを伴うと考えられます。
バイパス手術で「もやもや」が消えることも
もやもや病は脳に血流を送る内頚動脈が狭くなる病気。そのため、狭くなった血管を補うために、体の適応反応として脳の中に無数の細い血管が作られます。
もともと「もやもや病」という名前は、血管の様子を造影検査で見たときに、細かな血管がタバコのモヤモヤとした煙のように見ることに由来しているそうです。困ったことに新たにできた細い血管は血流を補うための十分な機能を持たず、その上、脆くて出血しやすいという欠陥を持っています。
もやもや病が引き起こす深刻な事態には、血管が詰まって血流が滞る「虚血」と、脳の血管が切れて出血し、周囲の脳にダメージを与える「脳出血」があります。
徳永さんが受けたバイパス手術とは、血流を送るのに不十分な血管を補うための別ルートを作る手術です。一般的には、内頚動脈から分かれて筋肉などにつながる血管を脳につなぎがえる手術を行います。これにより、脳に血流が十分に送られるようになり、また、もやもや病の原因となっている後から作られた細かな血管が消失することもあるそうです。
手術の成功で日常生活の制限もなくなる
徳永さんは2001年にも同じ病気で倒れています。このときは手術は行わず、約1年半後に復帰しました。2016年に開頭手術に至ったということは、長期的に見て手術を行った方がメリットが大きいと判断した、ということを示しています。
誰だって頭蓋骨を開くような手術は避けたいと思って当然です。実際、脳外科の手術は、手術することそのものに(近年は小さくなってきているとはいえ)一定のリスクが伴います。一方、病気によっては早めに手術を決断した方が良い結果につながることが少なくありません。そして、手術をできるだけ回避すべきか、それとも積極的に行うべきかは時代によっても判断基準が異なってきます。
もやもや病に関しては、徳永さんも受けたバイパス手術を早めに行うことで、脳の血流不足が引き起こす虚血、さらには脳梗塞などのリスクを低下させておくのが良い、という考え方があるそうです。おそらく、2001年に倒れ、手術を行わずに復帰した際は、脳の血流の改善も万全ではなく、日常生活において、運動や呼吸に関して何らかの制限が残っていた可能性もあるでしょう。これに対して、手術の成功によって脳の血流が改善した後にはそうした制限もなくなっているはずです。
今回、立ち眩みによってツアーを中断していたものの、およそ1カ月でツアーを再開でいたということは、徳永さんのもやもや病は、以前の手術によって危険な状態を回避できているのではないでしょうか。
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