しかし、4月22日のブログで再び入院することを告白。歩けない、息苦しいといった症状が語られていましたが、入院の目的については明言されてはいませんでした。
そして、4月24日、麻央さんが新たに更新したブログによって今回の入院目的がはっきりしてきました。
それは、貧血の改善と炎症の抑制です。そして、その手段となるのが輸血と抗生剤だということが分かっています。
乳がんの治療に輸血があるというのは少し意外ですよね。
何のために輸血を行うのか? 乳がんで炎症が生じるとはどういうことなのか?
ここではいくつかの疑問について見てみましょう。
麻央の貧血は炎症と結びついている
小林麻央さんはブログの中で、
貧血が改善したので、
次は、身体の中の炎症を抑える。
ひとつひとつクリアしていこう!
と述べています。
貧血と炎症という別々の問題があり、片方が解決したので、残るはもう片方のみ、という認識が見て取れます。
しかし、恐らく医師の側ではこの2つを別々のものとは見ていないでしょう。
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実際は、炎症が生じているから貧血が起きるのです。そして重要なことは、この炎症が癌に特有のものであるということ。
末期がんになると激やせする人が多いことが知られていますが、その原因は「がん食欲不振悪液質症候群(CACS:cancer-related anorexia/cachexia syndrome)」だと考えられています。
がん食欲不振悪液質症候群は、がんが進行することで正常細胞がダメージを受けて炎症が生じ、炎症性サイトカインという物質が作られることに起因します。
炎症性サイトカインには次のような働きがあります。
・骨髄の造血機能を低下させ貧血を引き起こす
・肝臓のアルブミン合成を抑制する
麻央さんに輸血が必要だったのは、炎症性サイトカインによって貧血が起きていたからだと考えられます。そして、ブログの中ではふれられていませんが、同時にアルブミンが低下している可能性が非常に高いのです。
生存期間を左右するCRP(C反応性蛋白)
アルブミンは肝機能や栄養状態と関わり、肝硬変の人や栄養失調の人で血中濃度が低下します。そして、がん患者においてもアルブミンの値が低くなる低アルブミン血症がよく見られます。
血液中のアルブミンが低下する一方で、値が上昇するものがあります。体の中に炎症が生じると、生体反応として肝臓で特定のたんぱく質が作られます。これがCRP(C反応性蛋白)で、血液中の濃度が高くなるほど炎症の度合いが高いことを示します。そして、CRPの値が高いほど、生存期間が短い傾向があることが知られています。
麻央さんがブログで直接ふれたのは貧血という症状でした。そして、同時に言及された、もう一つのキーワードである「炎症」によって、ここでいう貧血は一般的な意味での貧血とは異なる深刻なニュアンスを帯びてきます。それは、麻央さんが貧血であると同時にアルブミンの値が低く、CRPの値が高いという、がん患者が通るある段階に入っていることを示すもののようにも思えます。
前回の入院と今回の入院で意味合いは異なる?
振り返ってみると、2016年の年末に麻央さんが入院したとき、そのあまりの病状の悪さに生命の危機を心配するのは自然なことでした。そのとき当ブログは大方の予想と逆行するように「必ず回復する」と述べたのでした。その理由は、麻央さんがブログに綴った内容を追跡すると、入院原因が「痛みの問題」にとどまっていることが予測できたからです。実際、麻央さんは緩和的な治療が功を奏して無事退院し、元気な姿を見せてくれました。
今回はどうでしょうか? 前回と同じように「必ず回復する」と言い切れるでしょうか?
もし、今回の入院理由が前回と同じように「痛みの問題」であるならば、今回も同様の治療を行うことで再び回復すると予想したでしょう。
しかし、憶測の域を出ない見解ではあるものの、今回の入院は前回の入院時とは異なる段階への移行を示しているように思えてなりません。今回の入院に関しては、必ず回復するとは断言できないのです。
麻央さんは、貧血は改善したので残りは炎症だけというとらえ方をしています。貧血と炎症の結びつき、その背景にある病態、そして、今後予想される展開などにはふれられていません。もちろん、実際に貧血や炎症が一時的なものであるならばそれにこしたことはありません。麻央さんがブログで語った内容が、がん患者の余命を左右するといわれる、がん食欲不振悪液質症候群を示唆するものでないことを願うばかりです。