女優の小栗香織さんが乳がんで闘病中であることを告白しました。スポニチアネックスの報道によれば、小栗さんは今年2月に乳がんと診断され、5月18日には摘出手術を行っています。
このところ有名人のがん告白が増えているように感じます。乳がんに関しては、乳房の全摘手術を受けた北斗晶さんや、手術を行うことができず闘病生活を続ける小林麻央さんの例があります。北斗さん、小林さんに比べると、小栗さんの場合は初期の乳がんで既に摘出手術(恐らくは乳房温存療法)を受けていることから、予後は良いと思われます。5年後生存率も9割をこえているはずです。
(参考:手術できない小林麻央、北斗晶より深刻!? ステージ・生存率は?)
気になるのは、小栗さんが、「5年から10年は付き合わなければならないようです」とコメントしている点。初期の乳がんで既に手術も終えているのに、こんなに長く闘病生活を続けなければならない理由は何でしょうか。
5年では治癒と見なせない乳がん
がんが治癒したかどうかを判断する尺度は通常5年です。5年間の間に再発等の問題がなければ、そのがんは治癒したと見なされます。生存率に関しても、仮にその後10年、20年と追跡を続けたところで、がん以外の死因による死亡の割合が高くなっていき、がんによる死なのかそうでないのかが不明瞭になるため、「5年後生存率」という形で判断するのが一般的です。
ところが、より細かく見ていくと5年間再発がなければほぼ治ったと判断できるがんもあれば、そうでないがんもあります。 例えば、大腸がんや胃がんは5年目以降の生存率がほぼ横ばいになるのに対して、乳がんや肝がんは5年後以降も生存率が下がり続けます。つまり、乳がんの場合は5年間再発がなくても安心できず、10年近く経過を観察する必要があるのです。
(参考:5年生存率を治癒と見なせる癌(がん)と、見なせない癌~国立がん研究センター「10年生存率」公表~)
ステージよりもタイプが重要になる乳がん
乳がんの闘病生活が長期化するもうひとつの理由として、抗がん剤治療の他に、ホルモン療法、分子標的薬などを使った多種多様な化学療法が行わる点も挙げられます。
乳がんはがんの大きさや広がりの度合いを示すステージよりも、むしろどのようなタイプの乳がんなのかによって予後や治療方針が左右されます。ステージは初期でも、全身にがんが広がってしまっているケースもあります。化学療法は基本的に、特定の腫瘍をターゲットにするのではなく、全身に広がっている可能性のある腫瘍をターゲットとするものです。確認できている腫瘍を切除した後も、確認できていないが、どこかにあるかもしれない腫瘍への治療を継続するのです。
乳がんの中には女性ホルモンによって増殖するタイプや、HER2過剰発現によって増殖するタイプなどがあり、そうしたタイプに該当する場合は手術後の化学療法の種類も増え、治療期間も長くなります。しかし、これは治療の手立てがそれだけ多いということですから、乳がんの治癒にとっては良いこと。むしろ、どのタイプにも当てはまらず、有効な治療の手立てがない場合の方が問題です。例えば、小林麻央さんは、有効な治療手段を選択できない「トリプルネガティブ」ではないかと推測されています。
(参考:小林麻央 トリプルネガティブ!? 日本発の新たな治療法とは?)
このように小栗さんが10年間もの闘病生活を視野に入れているのは、乳がんが5年で「治癒した」と見なせないがんであること、そして、乳がんのタイプによっては術後の化学療法を長期間継続するからだといえるでしょう。
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