【元おニャン子・生稲晃子さん】乳房温存手術を繰り返し、最後は全摘…知っておきたいリスクとは?

元おニャン子クラブの一員で現在も女優として活躍する生稲晃子さんが、乳癌で5回も手術を行っていたことを明かしました。生稲さんに乳癌が見つかったのは2011年のこと。最初に選択した手術は「乳房温存手術」でした。再発を防ぐために放射線治療と薬物療法を続けていましたが、翌12年に再発していることがわかり、再び乳房温存手術を行います。

そして、翌13年に再び再発が確認されると、今度は主治医の勧めもあって乳房全摘を決意したといいます。大変不幸なことですが、生稲さんの場合は、よかれと思って選択した乳房温存手術によって、結果的に再発を繰り返すことになってしまいました。乳房温存手術に伴うリスクについて調べておいた方がよさそうです。

乳房温存手術とは?

乳房温存手術は、乳房を全部取ってしまうのではなく、切除を必要最小限にとどめる手術です。適応となるのは、非浸潤性乳がんというごく初期の乳癌、ステージ1または2の浸潤性乳癌、術前化学療法で縮小した浸潤性乳癌、となっています。乳房を残すわけなので、当然ながら再発する可能性はあります。従って、手術後に放射線治療を行うことが必須とされています。

乳房温存手術は全摘手術と比べても予後が変わらないという報告があります。成績が同じなら、「残せるものなら残したい」と思うのは当然の心理でしょう。患者さんの希望もあって、乳房温存手術を選択するケースが増えていったといいます。しかし、「乳房温存手術か、全摘手術か」という問題については、医師によって考え方が異なるのが実情です。

乳房温存手術が全摘手術と同様の予後が得られるといっても、それは、術後の放射線治療とセットで考えた場合です。これは、多くの女性が心配する術後の「見た目」の問題ともかかわってきます。まず、欧米人に比べて比較的小ぶりな日本人の乳房の場合、ほんの少し切除しただけでも見た目が変わってしまうことは少なくありません。そして、放射線治療は乳房の組織を硬くする傾向があります。実のところ温存手術においては、部分的な切除と放射線治療の影響により、見た目に関する満足度は決して高くないといわれています。

再発率が高くなるケースとは?

乳房温存手術は大きい癌に対しては行うことができませんが、術前化学療法(抗がん剤治療)によって癌をある程度小さくすれば実施が可能です。しかし、もともと大きかった癌を小さくしてから乳房温存手術を行った場合は、そうでない場合に比べて予後が悪くなる傾向があることが知られています。

国立がん研究センターは、術前化学療法を受けた後に乳房温存手術を行った患者さん375名のデータを分析しました。その結果、4年間の乳房内再発率は4.4%となり、なかでも1)エストロゲンレセプター陰性、2)化学療法後がん病巣が複数残存、という条件のもとで再発が起きやすいことを指摘しています。

1)エストロゲンレセプター陰性、については少し補足が必要になるでしょう。乳癌の約7割は、女性ホルモン「エストロゲン」の影響で増殖する「ホルモン依存性乳癌」です。これはエストロゲンレセプターが陽性となるタイプであり、エストロゲンの作用を阻害するホルモン療法を手術の後に行うことで乳癌の増殖を抑えるのが一般的です。一方、エストロゲンレセプターが陰性となるタイプでは、乳癌がエストロゲンの影響を受けないため、ホルモン療法を行わないことがあります。そして、国立がん研究センターの指摘によれば、術前化学療法の後にも病巣が複数残存しているケースで、その乳癌の性質がエストロゲンの影響を受けないタイプ(エストロゲンレセプター陰性)であった場合に、乳房温存手術後の再発率が高くなる可能性がある、ということなのです。これは、乳房温存手術を選択するかどうかを判断する上で、一つのポイントとなるものです。

最後にもう一つ。恣意的な観点であることをお許しいただきたいのですが、生稲さんの5回の手術が、全摘を前提とした人工乳腺(インプラント)が保険適用となる2013年をまたいでいることが少し気にならないでしょうか。人工乳腺は、美容医療とも共通する形成外科の技術によって、高い整容性(見た目の良さ)が期待できる治療として知られています。生稲さんが初回の手術と再発後の2回目の手術を行ったのは2013年以前のことです。そして、全摘手術を選択したのは、(こう言っては何ですが)ちょうど人工乳腺が保険適用となった直後ともいえる時期なのです。もし、最初に乳癌が見つかったのが2013年以降だったとしても、同様の選択になっていたでしょうか?

技術の進歩によって治療方針は変わります。そして、新しい技術や考え方が普及するスピードも、地域や医療機関によってタイムラグが生じます。また、良い治療であることが分かっていても医療経済上選択できない、お勧めできないということもあるでしょう。ひとついえることは、生稲さんのケースが、日本の乳癌手術が変化を迎えたのと時期を同じくしていたということです。医療において「何が正しいか?」は、置かれた状況や時期によっても変わるのではないか、そのようなことを考えさせられるエピソードのように思われました。

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