腫瘍について、「良性」か「悪性」かがよく問題になります。この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
悪性腫瘍は異常な増殖の仕方をする
悪性腫瘍は正常な細胞には見られない異常な増殖をします。私たちの体の細胞はDNAを正確にコピーすることで、新しい細胞が古い細胞に置き換わって新陳代謝を繰り返すことができます。しかし、その際にDNAのミスコピーが生じます。通常は、コピーに失敗した細胞はすぐに免疫担当細胞によって破壊されます。しかし、ミスコピーの数が多すぎたり、免疫担当細胞の働きが弱い場合には、コピーに失敗した細胞が細胞分裂によって大どんどん大きくなります。これが悪性腫瘍です。
固有の境界をもたない悪性腫瘍
悪性腫瘍は、正常細胞が持つような固有の境界を持ちません。例えば、大腸がんの場合においても、最初は粘膜の表面にとどまっていますが、次第に粘膜下層、筋層という大腸の壁の深くまで入り込んでいきます。このことを「浸潤」といいます。さらに、がんが腸の壁の中に浸潤し、血管やリンパ管に達すると「転移」の危険が生じます。転移とは、がんが元々発生した場所だけでなく、他の臓器に移って増殖してしまう状態を指します。
悪性腫瘍が良性腫瘍と大きく違うのは、「浸潤」と「転移」によって異常に増殖、拡大していく点だといえるでしょう。