オリックスの安達了一選手は潰瘍性大腸炎のために3週間程入院していましたが、練習を再開したと報じられています。潰瘍性大腸炎は、病気のメカニズムが解明されておらず、治療法も確立していない「難病」に指定されています。完治しないこともあり、内服薬で炎症を抑え、症状が落ち着いた「寛解(かんかい)」と呼ばれる状態をキープすることが目標となります。
潰瘍性大腸炎はそれ自体が苦痛や生活上の不都合をもたらすものですが、最も心配されるのは大腸がんの発症です。
20代で発症のピークをむかえる潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、下痢や腹痛、下血といった症状をともないます。日本においては、10万人に100人ほどの割合で発症し、患者数は166,060人(平成25年度)とされています。内服薬によって炎症を抑える治療が中心ですが、薬が効かない場合や、大腸に穴があいてしまう場合などでは外科手術を選択します。幅広い年齢層で発症し、発症のピークは男性20~24歳、女性25~29歳と、比較的若い内に発症するのが特徴です。
大腸がんを発症するリスクが高くなる
潰瘍性大腸炎では、大腸に炎症が生じた状態が長く続きます。このことは、大腸がんの発症リスクを高めることが分かっています。一般の大腸がん発生率は0.3%だそうですが、潰瘍性大腸炎に罹っている年数が長いほど発生率が上昇してしまいます。
《潰瘍性大腸炎による累積癌化率》
10年…0~5%
20年…8~23%
30年…30~40%
このように、20年、30年と経つ間に大腸がんを発症するリスクは高くなります。これを見越して、定期的に大腸内視鏡検査を受けるなど、万が一大腸がんを発症した場合の早期発見に努めることが重要だと考えられています。
手術を行うケースとは
がんを発症する前段階を前がん病変といいますが、潰瘍性大腸炎の病変に生じる「異形成」は前がん病変と考えられます。たちが悪いと思われる異形成が見つかった場合は、大腸がんの発症を抑えるために、この段階で大腸全摘手術を行うこともあります。
また、大腸がん以外にも、薬が効かない、薬の副作用が重い、入院を繰り返してQOL(生活の質)の低下が著しい場合には手術を行います。手術には、永久人工肛門となる回腸人工肛門造設術のほかにも、排泄機能を保つことのできる自然肛門温存術を選択できるケースもあります。
潰瘍性大腸炎と「付き合っていくしかない」ということの内には、より重い症状への進行を予防するとともに、万が一のがん化に備えた早期発見の努力も含まれており、その負担は決して小さくないということが分かります。
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