3月16日、フランク・シナトラの息子で歌手・俳優のフランク・シナトラ・Jrが父と同じ心臓発作で亡くなりました。心臓病が遺伝することはあるのでしょうか?
病気が遺伝する2つのパターン
がん、脳卒中、心筋梗塞などでは、近親者に同様の病気にかかった人がいる場合は特に注意が必要だとされています。だから、該当する人は積極的に検診を受けるように勧められもします。「病気に遺伝的要因がある」ということはいわば常識となっています。極端な例を挙げると、アンジェリーナ・ジョリーさんは母を乳がんで亡くしており、自分も遺伝的に同様のリスクを抱えているため、乳がんになる前から乳房を切除する手術を受けて話題になりましたね。
問題は「病気が遺伝する」という場合と、「病気に遺伝が関係する」という場合では意味が違ってくることです。
この違いがどのようなものであるかは、「循環器情報サービス」の次のような説明が参考になります。
《病気と遺伝子との関係には2のタイプがある》
1)ある遺伝子の暗号文字が異なっているため、その病気に非常にかかりやすくなるケース(単一遺伝性疾患)
2)遺伝子の暗号文字が異なっているが、必ずしも病気になるわけではなく、生活習慣の影響が加わって病気にかかりやすくなるケース
遺伝的要因に生活習慣が加わって心臓病になる
上に挙げた2つのタイプの内、心臓病は2)に当てはまり、遺伝の要因だけで病気になるわけではなく、生活習慣が大きく影響します。例えば、次のように整理することができるでしょう。
・心臓病の危険因子である高血圧、糖尿病、高コレステロール血症は遺伝的な要因が強く、近親者にこうした病気を持つ人がいれば、自分も同じ体質を受け継いでいる可能性が高い。
・さらに、生活習慣から来る心臓病の危険因子である肥満、喫煙が重なると心臓病を発症しやすくなる。
心臓病が遺伝するのではなく、複数の危険因子が遺伝する
心臓病そのものが遺伝することはありませんが、例えば心臓病と密接に関わる高血圧などは遺伝の影響が大きいといわれています。さらにいえば、高血圧についても、それ自体が遺伝するわけでもありません。高血圧になりやすいいくつもの要因が遺伝します。「循環器情報サービス」は高血圧に関わる遺伝子として次のものを挙げています。
・ナトリウムやカリウムを細胞のなかに取り込んだり、排せつしたりするたんぱく質に関係する遺伝子
・血圧を上げる作用をもつ生理活性物質を作る酵素に関係する遺伝子
・血圧を下げる作用をもつ生理活性物質を作る酵素に関係する遺伝子
・活性酸素を分解する酵素に関係する遺伝子
・高脂血症や動脈硬化に関係する遺伝子
これら複数の遺伝子の違いが組み合わさって高血圧になると考えられます。同様のことが糖尿病、高コレステロール血症といった心臓病の危険因子にも当てはまります。心臓病の家系では、心臓病の発症につながる高血圧、糖尿病、高コレステロール血症を引き起こす非常に多くの要因が遺伝的に受け継がれており、ここに肥満、喫煙といった生活習慣が加わることで心臓病を発症しやすくなります。自分が心臓病の家系だという人は、心臓病につながる生活習慣に人一倍注意しなければなりませんね。